四つの視点(第36回) 今月のテーマ「なぜ起こる? ISO9001取得企業の品質事故」
品質トラブルは防止できる
企業/大成建設(株) 関西支店 土木部 榊 修一 氏
二つのトラブル原因
建設工事でこれまで発生した品質トラブルの原因は、大きく二つのタイプに分類できる。第1に、事前に発生することが予測可能なトラブル(第1のトラブル)、第2に発生が予測できない特異な、あるいは例外的なトラブル(第2のトラブル)である。
第1のトラブルは、計画段階で防ぐことができるトラブルであり、建設工事では着工前の事前検討会、施工計画書作成、作業標準作成、作業手順作成、ツールボックス・ミーティングなどを通じて充分対処ができるものである。これに対して、第2のトラブルは計画段階では防ぐことができない。予測不可能な異常気象が原因となるトラブル、何らかの条件により発生した設計仕様をこえた負荷などが該当する。
当たり前だが、第1のトラブルの方がより多く発生している。問題はその発生割合であり、正確なデータはないが、第2のトラブルの発生率は全体の5%未満と思われる。ほとんどの品質トラブルは事前に発生を予測できるものであり、工事の計画段階でシステマチックな予防処置を行えば、相当数の品質トラブルは防止できるといえる。
第1のトラブルはシステムで扱い、組織全体で対処することができるが、第2のトラブルは独立した事象として個別に対処をするべきであり、システムには入れるべきではない。ISO9001は決めたことを確実に実行することを要求しているので、予測可能なトラブルを特定し、それを防ぐ方法をとることを組織が施工現場への内部の要求事項とすることで、第1のトラブルは相当防止できる(トラブル防止の強力なツールになる)。
トラブル防止に内部監査を活用
計画段階で予測された品質上のリスクのうち、回避すべきリスクについて、どのように回避策を実行しトラブルを防止しているか、ひいては事前検討が効果的に機能しているかをシステマチックに地道にフォローすることが品質トラブル防止のための近道であると考える。このフォローには、もっとも強い規格要求事項の一つである内部監査を効果的に利用する方法を提案したい。内部監査とは違う別の機能をシステムに組み入れて、計画段階で発見された事項をフォローすることもできるが、規格要求事項を利用する方がシステムも構築しやすく、社内の合意も得やすく、活動も長続きし、良い結果を期待できる。
では、どのような内部監査を計画実行するか。
通常、内部監査ではチェックリストを使用するが、この中に計画段階で発見された事項をレビューする項目を追加する。これはできるだけ具体的なチェック項目が良いが、一つのチェックリストで多数の現場をカバーする場合は、個々の現場のチェック項目を具体的に記した文書を作成することも一つの方法である。
次に内部監査員の問題がある。効果的な内部監査を実施するには、その組織のQMS及び規格要求事項を理解しているだけでは不足であり、組織のマネジメントに通じている必要がある。組織の業務処理全体の流れと、意思決定プロセスを理解していることが必要である。品質トラブルの種を発見し、改善のヒントが見つかるのは、プロセス間の不調和・プロセスの現実との不一致の場合が多いが、これを見つけることができるのは有能な内部監査員であり、内部監査員の力量に期待するところは大きい。
ISO9001の効果についての議論は今後も続くだろうが、マネジメントの経験がない人の意見に惑わされることなく、しっかりと地に足のついたシステムを構築し、品質トラブルを防止したいものである。
<アイソムズ 2006年9月号掲載>

