四つの視点(第37回) 今月のテーマ「ISO14001自己宣言の課題」
費用をかけず、いかに証明するか
コンサルタント(1)/西村経営支援事務所 代表 西村 三郎 氏
何のためにEMSを構築するか
組織がISO14001規格を用いて環境マネジメントシステム(以下EMS)を構築する目的には、対外的な目的と対内的な目的があります。対外的な目的は顧客企業の要請に応える、投資家向けIR、ブランド力の向上などがあり、対内的な目的としては、環境法規制の順守や汚染の予防を通して環境リスクを最小限に抑える、PDCAのマネジメントサイクルを習得し内部コストを削減しながら効率的に環境配慮型商品・サービスの開発・提供を行う、社員のモラルの向上、といったことが考えられます。このような背景の中で、自己宣言を用いるメリットは認証審査登録費用の削減です。
自己宣言の“適合証明”
組織が自己宣言を行うには、ISO/IEC17050(JISQ17050)適合性評価-供給者適合宣言-の要求事項に従って有効性の証明を行なう必要があります。
有効性の証明には規格への適合を実質的に裏づける支援文書が必要で、支援文書には適合性評価結果と評価者の資格、専門能力、認定状態の詳細を含めることが求められています。この要求は当然のことで、組織に関与する評価員がマネジメントや環境の専門家でないと組織が良いマネジメントシステムの構築や維持が困難です。
そこで、私どものコンサル事務所が提案しているのは、IRCAやCEARなどのEMS審査員資格を持った審査員を派遣し、審査員個人の専門能力に基づく評価書と適合証明を発行するというものです。この方法では、認証機関で発生している一般管理費用は発生しません。また、登録費用は不要となるため結果的に外部支払い費用は認証登録の半分以下となります。
自己宣言は、もともと自己責任によるものですから、運用上はこのような方法で問題ありません。しかし、当初のEMS構築の目的に対してこれでよいかを考えると、対内的な目的は達成されますが、対外的な目的に対してはいくつかの問題が残ります。
対外的な課題
第一に「外部者による適合確認の困難性」です。供給者がISO14001に基づくEMSを構築・維持することを希望している顧客の立場では、自己宣言の場合、自己宣言書及び附属文書を取り寄せ、内容を調査しなければ、本当にISO14001に適合しているかを確認できません。顧客企業がそんな面倒なことをするでしょうか。
二番目には「自力による適合維持への信頼性」です。認証審査のように外部からの定期審査が制度化されていないので、自主的な定期評価の実施がだんだんと疎かになり、“適当宣言”に変わっているのではないかという懸念が生じます。そこで、よほどしっかりした定期評価の仕組みを作ったことを宣言しなければ信用してもらえません。
このようなことから、自己宣言は顧客要請ではなく、内部的な目的からISO14001に取り組んでこられた自治体や一部の大手企業への導入が進んでいますが、一般の中小企業へは広まっていません。
私どもが、自己宣言の支援を企画したのは2003年頃で、その当時、他に中小企業が費用をかけずにEMSを構築する手立てがありませんでした。その後、エコアクション21やKESなど、中小企業があまり費用をかけずにEMSを構築する制度が整ってきました。
以上のような状況から、現在では新しくEMSを構築しようとされる小企業の事業所には自己宣言ではなく、むしろこれらの認証制度を利用されることを推奨しています。
<アイソムズ 2006年10月号掲載>

