四つの視点(第37回) 今月のテーマ「ISO14001自己宣言の課題」
自己宣言はマーケティング活動
コンサルタント(2)/アイエル経営診断事務所 代表 板賀 伸行 氏
伝える目的と伝達方法
ISO14001などのマネジメントシステムの適合性を自己宣言することは、外部組織との情報発信型のコミュニケーションである。よって自己宣言の客観性・信頼性を考える前に、(1)伝える目的は何か、(2)伝えるべき対象への情報伝達の方法が有効か、この2点を明確にして実践する必要があると思える。
つまりこれは、企業の商品に対する販売促進活動と同様で、経営戦略に沿ったマーケティング活動の一つである。情報の伝達がまったく機能していないとしたなら、そもそも客観性や信頼性を論じること自体が無意味である(嘘をついても聞く人がいなければ被害はない)。これは第三者認証を受けている企業に対してもいえることである。
一つの事例を見てみよう。テレビでも広告をしている有名食品会社の「もやし」の新製品である。この新製品では値段が高いための理由を徹底的に説明している。パッケージの裏面には「高い理念」と称して、(1)安全にこだわり、(2)おいしさにこだわり、(3)環境負荷低減にこだわり、などの項目ごとに細部の説明を施し、さらに3種類のISO認証取得の情報も掲載し、「高い秘密キャンペーン」というセールスプロモーションまでも展開している。
この会社の伝えるための目的は、わずか単価100円にも満たない商品でも、より高いものを買ってもらうことである。顧客に高い理由を理解・納得してもらえば、品質に対する信頼も高まり、その結果、高級ブランドになるかもしれない。
外部コミュニケーションの重要性
自己宣言をする組織には、これに近い明確な目的があって情報発信ができることを前提として、客観性と信頼性について意見を述べてみたい。
私見ではあるが、結論をいえばこれらを評価するのは情報を受け取る側(その組織に関心を持っている者)だけでいいと思う。そのためには適合を証明するマネジメントシステムの内部文書や記録の保存以外に、伝えたい相手にとって理解しやすく納得させるに充分な伝達ツールが必要と思われる。
大手企業が用いる環境報告書が代表例だが、中小企業向けのエコアクション21においても環境活動レポートの作成が求められている。ISO14001においては、そこまでの情報公開は義務づけられていないが、少なくとも自己宣言組織には環境方針とともに利害関係者がアクセスしやすい方法での多くの情報提供が必要であろう。
CSRの大きなコンセプトも情報公開である。上場企業には財務諸表の公表が義務づけられてはいるが、現在多くの企業でIR(投資家関係性活動)のためにホームページ上でアクセス可能にしている。監査法人の不祥事によってその信憑性にも疑問が持たれる時勢になったが、賢い投資家なら財務諸表だけに頼らず、将来の事業計画書を精査してその企業価値を読み取るはずである。
環境マネジメントに関する情報についても同様である。第三者認証がなくても真摯に環境マネジメントに取り組む組織からは、活動成果報告のみならず、今後の革新的な取組みや共感を得る内容を読み取ることができるはずだ。そこに充分なコミットメントがあれば、情報の受け手は今後も継続した情報提供に期待を寄せ、それによって組織の活動にも弾みがつくはずである。このように、自己宣言組織が環境活動について充分な外部コミュニケーションができれば、第三者認証を受けただけで自社の取組みと社会への寄与についての情報を何ら発信していない組織よりは、はるかに価値のあることではなかろうか。
<アイソムズ 2006年10月号掲載>

