四つの視点 第38回(4) 今月のテーマ「ISO22000への期待」

四つの視点(第38回) 今月のテーマ「ISO22000への期待」

ブレのない食品安全の教育ツール

企業/(株)平松食品 代表取締役 平松 賢介 氏


老舗つくだ煮専門店として


私ども(株)平松食品は愛知県豊橋市に位置し、1922年(大正11年)あさりつくだ煮の加工で創業した。現在の主な製品は「いわし甘露煮」「さんま蒲焼」「本はぜ甘露煮」「あゆ甘露煮」など、五つのカテゴリ33品目の甘露煮製品を製造している。

つくだ煮・甘露煮は江戸時代初期に確立された食品で、耐菌性に優れ腐敗とは縁遠い食品でもあり、調理後は取扱いも容易なことから、現在でも家内工業的な小規模な生産者が多いのが現状である。当社もその例外でなく、私が入社した1987年当時は、両親、親戚、あとはパートタイマーばかりで20名足らずの会社であった。私は学校を卒業した後に3年間お世話になった愛知県一宮市の惣菜メーカー岩田食品(株)で今日の経営手法のベースを学んだ。ここで、つくだ煮メーカーとしての衛生概念は大きく修正されることになり、加えて経営者としての視点、社員としての視点、そして小集団活動(QCサークル)を学ぶことになった。

ISO22000の導入効果


当社は、今日では正社員45名、時間給者90名の所帯となった。2000年に工場を新設した時期は、消費者の食品に対する意識が高まり、HACCPも食品業界においては重要課題となった時期である。新工場はHACCP対応のゾーニングを施しPRPを整備した。しかし、スタッフがPRPを使いこなせなければHACCPは維持できない。そんな現実に直面した際に、かつて学んだ小集団活動を推進することで活路が見出せた。しかし、当社が選択したのはQCサークルではなく、ISOであった。

トップダウンによる継続的な改善活動であるISOのマネジメントシステムは、明確な目標設定と是正・検証によりPDCAが回り、マンネリズムに陥りづらいシステムと認識している。ISO22000は、HACCPの視点をあわせ持ち、教育活動のガイドラインを提示してくれる。規格要求事項を実現するために、社内に設けられた標準作業手順やマニュアル、そして、フードチェーンにおける外部・内部のコミュニケーションの活発化や内部での相互監査による水平展開の向上など、零細なわれわれにとっては、明確な活動設定ができるようになったわけである。

また、ISO22000の特徴でもあるOPRPは、ただ単に食品の安全性を確保するだけのCCPを補完し、定義の仕方によっては、食品の品質、おいしさを維持、発展させるためのポイントにもなる。つくだ煮業界においては、とかくこの部分は職人の勘所として存在していた部分である。

そのことを口やかましくいうと、スタッフは閉口し、意味を理解しなくなる傾向にある。そんな時にISO22000の規格要求事項といえば、素直に従ってくれる。外部の審査があるといえば、なおさら真剣になる。

食品安全意識向上のツールとして


食品メーカーにおいては、作業者一人ひとりが食品安全を意識し、的確な作業を要求される。伝統産業であるつくだ煮メーカーにおいても例外ではない。そのような中にISO22000の食品安全マネジメントシステムは、明確な指標を提示してくれたわけで、ブレのない教育活動と食品安全システムを推進していく上で、有効なマネジメントツールといえる。

意識が向上していく社員の姿を見るにつけ、人の成長の喜びを感じ、ウォルマートの創業者、サム・ウォルトンがいった「教育は最大のコストダウンだ」という言葉を実感する。これからもこのマネジメントシステムは生長発展する組織作りのためのツールとして推進していくことだろう。

<アイソムズ 2006年11月号掲載>

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