四つの視点(最終回2) 今月のテーマ「ISO、これからの10年」
ISO14001制定10周年、進化を続ける環境マネジメント
研修機関/(社)日本能率協会 ISO・マネジメントシステム事業部 事業部長 中川 優 氏
改善効果が実感できない経営者
ISO14001は継続的改善のための経営管理ツールであるにもかかわらず、ユーザーである経営者からは「ISO14001の改善効果が見えない」との声が耳に入ってくる。“改善効果が実感できない”のだという。
“実感できない”理由を考えてみたい。まず、規格に継続的改善の手順が規定されていないからだという意見がある。もちろん、規格に書いてなければ改善一つできないというのは情けない話なのだが。事実として、【不適合⇒是正処置⇒予防処置】という“小さなPDCA”の連続だけでは、現状維持レベル以上にはならない。
もう一つの理由は、EMSの運用において、EMSの経営効果が見えにくいのではないだろうか。EMSは一種のリスクマネジメントであるから、その弱点として、有事以外には存在感がないものだ。よって有効に機能しているか否かは経営者からは極めて見えにくい。少なくとも経営者が端的に知りたいのは、「PDCAがキチンと回っていますよ」という結論などではなく、環境経営度や企業体質にどう寄与したかではないだろうか? “環境経営”が提唱されて久しいが、環境マネジメントと経営計画とがまだまだ別物である会社は依然として多い。また本業と関係の薄い環境側面を中心に据えたEMSも少なくない。
ISO14001の次の10年を考える
私の考えは、前者に関しては、規格は最低限の要求事項しか規定しないのだから、本気で改善したいのなら、まずは継続的改善の手順をマニュアルに記述してはどうかということだ。当然、自社独自の「4.7継続的改善」「4.8環境経営」という章立てがあっても一向に構わない。ちなみに、この“継続的改善”には、下から一つひとつ積み上げていく「改善」と、上からの「改革」という側面がある。よって経営者の方々には、是非ともマネジメントレビューの際、強く改革を意識した指示をお願いしたい。後者の方は、“継続的改善効果の見える化”をどう扱うかが、今後ISO14001が経営における存在感を決定づける最大の要因だと考えている。
私は、昨年からISO14001の発展段階が「適用拡大期」に突入していると考えている(発展段階の詳細は「CEAR誌参照2006年9月号」)。2004年版の発行により、規格の解釈、とりわけ影響を及ぼす環境側面の理解が深まり、EMS適用範囲が格段に広がった。この“2004年版効果”は、富士通やソニー、ブリヂストンなどをはじめとする、EMSのグローバル統合やグループ・全社統合を間違いなく加速させた。
EMSの希薄化と定着度
ただ、適用範囲が拡大すると新たな問題が起こってきた。それは“EMSの希薄化”である。社会からの要請を考えてみても、企業の影響が及ぼせる範囲が、サプライチェーンやグループワイドに拡大することは時代の流れである。しかし限られた事業所内での従来の小さなPDCAの時代とは異なり、統合EMS体制においては社員などへの浸透度、定着率が相対的に薄まってきている。この体制では、有能なISO事務局だけが走り回っても解決できない案件が山ほどあるからである。
そのため、今後強化する必要があるのは、「4.4.3コミュニケーション」の、とりわけ“内部コミュニケーション”と、「4.4.2力量、教育訓練及び自覚」の“自覚”である。内部コミュニケーションの方は外部審査で不適合にしにくいという盲点でもある。コミュニケーションと自覚という「理念系」がしっかりしていないと、継続的改善どころか形骸化の進行は間違いなく早まる。
ISO14001の次の10年、この“浸透度・定着度”を環境経営のファンダメンタルズと位置づけ、多くの経営者が継続的改善効果を実感してくれると確信している。
<アイソムズ 2006年12月号掲載>

