四つの視点(最終回4) 今月のテーマ「ISO、これからの10年」
“悪貨が良貨を駆逐する”審査登録制度
コンサルタント/(有)ロジカル・コミュニケーション 取締役社長 有賀 正彦 氏
審査登録制度、形骸化の実態
審査登録制度の目的はいわずもがなだが、審査登録を受ける企業の顧客や利害関係者に対して信頼感・安心感を与えるためにある。では、審査登録制度開始以前と比較してその目的は達成できたのであろうか。
答えは「そうでもあり、そうでもなく」だと思う。
あくまでも経験的な話であるが、例えばISO9001の国内登録企業数が5,000社ぐらいの時は、それなりに業績も知名度も立派な会社が多かった。しかし、これら著名な企業であってもマネジメントシステム規格という側面で、審査員という第三者が仕事の仕組みをチェックしていくと、案外自らでは気がつかなかった「穴」があった。まさに「灯台下暗し」状態で、審査側、受審者側の双方で「審査登録制度って意義があるなぁ」と真に感じた。
また企業側も、指摘を水平展開して発展させる形でマネジメントシステムの向上を図っていくことが実現できたと思う。つまり、企業側に「マネジメントシステムを自律して成長させていく能力」があることは継続的な取引をする上で、顧客や利害関係者にとっては一番の安心感であると思う。
しかし、ISO規格全体で延べ10万近くの企業が登録にチャレンジしている最近はどうであろう。仮に審査を担当した審査員がその企業の実情に合わせたレベルでバランスのよい指摘をしたとしても、企業が「マネジメントシステムを自律する能力がないのであれば、登録書を審査登録機関は発行しなければよいのではないか」という疑問も生じるであろう。しかし、現在の制度においては「登録申請してきた企業や審査登録している企業をむやみに登録不可にすることはできない」ことが現状である。
登録不可にできない原因は例えば、
1)審査登録機関の経営上の理由(例:受審企業紹介者との関係)
2)受審企業の状況を推し量ると温情が働く
3)審査登録機関の移転が容易
などがあると思うが、それが審査登録制度を形骸化させて、安っぽいものにしているのではないかと思う。
より困難になる健全な制度運用
今後の解消策としては、
a)審査登録機関のブランド化
b)審査を担当する審査登録機関は無作為抽出で選定する制度
c)移転理由のさらなる明確化と審査登録機関間の情報の共有化(例:金融機関のブラックリスト的なもの)
などが考えられる。
しかし、審査登録制度がある程度産業として成熟してしまった今となっては、どの策を講じるのも一筋縄ではいかないと思う。したがって、登録企業の不祥事が発生したり、過度な顧客獲得合戦をして審査登録制度の信頼感を失墜させかねない事態が発生するたびに、認定機関はさらに認定基準の厳格な運用解釈を対処療法的に実施してきた。その結果として審査登録機関の健全な業務運営にも悪影響を与えていると思う。
誤解をおそれずにいえば、健全な制度を維持するためには、認定される審査登録機関はある程度由緒正しいところ、またはかなりしっかりとした経営母体があるところのみにするべきだったのではないかと思う。要は、審査登録機関の数が多いので、どうしても悪い市場原理が働いてしまう。
今後を占うと、今の審査登録制度では買い手(受審者)の強い立場が続くことが予想されるので、それを防止するために手続きばかりが複雑になり、健全な審査登録制度は継続できないと思う。
<アイソムズ 2006年12月号掲載>

