グローバル・ニュース 2009年1月号(5)
コラム ISO9001:2008の発行に寄せて
TC176メンバー・(資)品質経営研究所 代表 加藤 重信
去る11月15日にISO9001の2008年版が発行されました。2008 年版の作成の議論に参加してきた一員としての感想などを書いてみたいと思います。
2005年5月ColumbiaのCartagenaでTC176/SC2が開催され、次の改訂作業が開始されました。この会議から私は日本代表としてではなく、ISO/IEC JTC1/SC7(ソフトウェアおよびシステム工学)からISOTC176/SC2へのLiaisonとして議論に参加しました。この会議で規格の要求事項の変更はしないことが決まりました。この決定によって、2000年版によるマネジメントシステム構築の問題点の見直しは、先の課題として積み残されました。いわゆるamendment(日本語では追補)として作業を進めることになり、1994年版、2000年版の議論において積み残された事項も、各国から寄せられた2000年版構築で明確になってきた多くの問題提起も、すべて門前払いとなりました。この状況で3年余もの議論を経なければならなかったことについては多くの疑問を感じています。
今回の改訂作業では、残念なことに2000年版の改訂時に参加していたメンバーが2、3人しかいませんでした。ですから、2000年版がどのような議論からそう書かれているのか理解されないまま、規格の文章が一人歩きしました。さらに、2000年版では規格執筆の仕様が無かったとの反省から、テキストが仕様に適合しているかを検証するグループを設立しました。本来は望 ましいはずですが,あまりに杓子定規に検証を行い、執筆グループが総意で記述を変更したときでも、検証グループから仕様に適合しないと戻されてしまう事態が何度も起こってしまいました。
さてISO9001:2008は新しい要求事項は含まないとしています。しかし、変更はされていませんが、規格1.1のNote1で規格の中で使う「製品」という語の意味を2000年版とは異なって、製造工程から意図して出力されるものも含むように変更しました。この変更によって、要求事項の7.3や7.5で使われる製品についての考察を変更しなければならない可能性が引き出されています。他にもいくつかの点で、Noteの記述が変更されたことによって、構築されたマネジメントシステムに変更が必要であるかを確認しなければならないと思われます。
また、今回の改訂と直接の関係はないのですが、以前から気になっていたことがあります。それは、2000年版に基づき構築したとされている大多数のマネジメントシステムにおいて、規格が要求する必要なプロセスを明確にすることが適切に行われているか疑念が残されていることです。その事実の一端として品質マニュアルがISO9001の要求事項の順に記述されていることがあげられます。
品質マニュアルは「組織の品質マネジメントシステムを規定する文書」と定義されていますから、規格の要求事項の順に書かれることが適切でないことは言うまでもありません。規格の要求事項は変更されませんでしたが、実質のあるマネジメントシステムとするためのよいきっかけととらえ、マネジメントシステムの構築、特に品質マニュアルの改訂に臨まれることを 強く期待してやみません。
現在の規格は認証のためのマネジメントシステムを規定する傾向にあります。次の改訂で発行される規格は、真のマネジメントシステムの構築に寄与できる規格となることを期待したいと思います。
加藤 重信 (かとう しげのぶ)
1943年生まれ。静岡大学工学部電子工学科卒業。日本ユニパッ ク(株)、(株)エービーシを経て1989年から2002年7月、 凸版印刷(株)。20余の各工場に対するISO9001に基づくマ ネジメントシステムの構築指導を担当。現在、合資会社 品質 経営研究所 代表。ISO/TC176/SC2/WG18 Expert。 (財)日本適合性認定協会のマネジメントシステム認定審査員。
<グローバル・ニュース 2009年1月号掲載>

