グローバル・ニュース 2009年7月号(6)
― SPECIAL INTERVIEW ―
不況のときこそ、企業は動く。低炭素社会実現への強い追い風
合同会社グリーンフューチャーズ 社長 吉田 敬史 氏
− 弊社コースの講師を担当されて、受講生の様子からISO 14001への取組みに変化を感じることはありますか。
グローバルテクノでは、ISO 14001審査員CPDコース(ECP)を担当していますが、ありがたいことに毎回多数の方に参加いただいています。受講生も大変熱心で、理解度も着実に上がっていると思います。講義の中ではグループ討議なども取り入れていますが、面白い意見が大変多い。話を聞いていると驚くほど前向きで「ISO 14001をもっと活用しなければならない」という論調が非常に多いと思います。
− 不況が長引く中、企業の環境活動が停滞するのではないかという不安もありますが。
歴史を振り返れば、日本企業は不況の時にこそ環境対応の基礎となる大きな第一歩を踏み出しています。
古くは1974年のオイルショックで、GDPは戦後初のマイナス成長となりました。しかし、一方で企業の公害防止設備投資はピークを迎え、国内の設備投資額の実に18%を占めた年でもあります。3年後の1977年にはOECD(経済協力開発機構)が報告書
「日本の環境政策」を公表し、日本企業の公害防止と経済成
長の両立が国際的に一定の評価を得たものです。
また、ISO 14001認証制度が離陸した1997~98年も暦年でGDPはマイナスです。しかし、1998年末には大手電気・電子メーカーの工場などISO 14001認証取得全体で2,000~3,000件がほぼ終わりました。当時も今と同様に“不要不急の支出は押さえろ”と、事務用品が割当制になったり、机の中で眠っているホチキスの針を女子社員が回収して歩いたりしていた時代です。しかし、そのような状況だった日本企業がISO 14001認証取得に何億という資金を投入し取り組んできたことはISO 14001が発展する基礎になったといえるでしょう。
−今回も大きな契機になる予感はありますか。
何が起きるのかは楽しみなところですが、低炭素社会の実現に向けて政府も相当のお金と力をつぎ込んでいますから、企業の環境担当者にとっては大変な追い風です。カーボンオフセット、カーボンフットプリント、排出量取引などはこの1年で制度作りができています。これだけ変化が早いと対応は大変ですが、企業の担当者はその重要性を肌で感じているでしょう。
経団連の意見を産業界の総意だと思ったら大間違いで、個別にはまったく考え方が違うはずです。
− その流れの中でISO 14001は役立つとお考えですか。
確かに、相変わらず「紙・ゴミ・電気」で終わっている組織や、自治体のISO 14001返上などネガティブなケースも多く見られますが、いつも思うことはEMSをもっと使いこなそうということです。
よく「本業でのEMS展開」などといいますが、そんな言葉を作ってしまったことがそもそも間違いで、製品・サービスでEMSを展開することはもともと要求事項です。それを今頃「本業で」などというのは本末転倒で、「紙・ゴミ・電気」だけであれば不適合、もうそれくらい厳しくいってもよいでしょう。
問題はネガティブケースよりも、積極的に取り組む企業に目を向けて、少しでも成功事例を増やしていくことだと思います。
− 本日はお忙しいところをありがとうございました。
吉田 敬史(よしだ たかし)
ISO 14001規格の策定を行うISO/TC207/SC1対応国内委員
会の委員長を務める。言わば、環境マネジメントシステムにお
ける国内屈指の権威。また、三菱電機株式会社に在職中は環境
推進本部の本部長等を歴任し、環境マネジメントシステムの実
務にも精通している。
2007年には合同会社グリーンフューチャーズ設立。現在同社
社長。またグローバルテクノでISO 14001審査員CPDコース
などの講師も担当している。
<グローバル・ニュース 2009年7月号掲載>

