特集 食品安全マネジメントシステム ISO22000認証制度 スタート直前ポイント検証!
PRPs/ハザード分析/CCP設定、
「安全な製品の計画及び実現」のための基礎とシステム構築ポイント
財団法人 日本冷凍食品検査協会 企画開発事業部
ISO/TC34/WG8国内専門分科会委員 新宮 和裕 氏
ISO22000の中核となる「7章 安全な製品の計画及び実現」は、HACCP手法に関するCodexガイドラインの7原則、12手順に沿っているが、オペレーションPRPなどISO22000独自の手法も登場し、より食品安全のためのマネジメントシステムを重視して策定されている。その基礎知識と構築ポイントについて、ISO22000の国内分科会委員でもある日本冷凍食品検査協会の新宮氏に解説をお願いした。
ISO22000とHACCP、及びISO9001は何が異なるのか
まず、HACCPとISO22000とは何が異なるかについて考えてみると、HACCPは安全性を確保する手法としては有効な手法であるが、その運用において次のような弱点があるといえよう。
(1)経営者の責任(コミットメント)が明確になっていない
(2)建前では、「農場から食卓まで」とフードチェーン全体を対象とすることになっているが、実際には製造過程を主体とし
た仕組みになってしまっている
(3)組織(企業)間、部署間の連携の重要性が、充分には明確にされていない
(4)PDCA(改善のサイクル)をシステムとして機能させる仕組みとしては、不充分である
ISO22000では、これらのHACCPの弱点を補い、食品安全にかかわるシステムをマネジメントすることにポイントを置いている。
次に、ISO9001とISO22000の違いであるが、図1のようにISO9001は、「品質の差別化」によってお客様の満足を得ようというものである。具体的には、仕事をやりやすくして「質」を上げることである。「質」には、モノ(製品)の「質」と人の「質」、さらに組織の「質」=会社の品位があげられる。
これに対して、ISO22000は、その名前にあるように食品の安全性を確保するためのマネジメントに特化している。
ISO22000の概念を表現したものが図2であるが、PRPs(PRPとOPRP)を基盤としてHACCPシステムを構築し、そのシステムをISO9001の考え方でマネジメントするものがISO22000である。 このマネジメントのためには、P:経営者のコミットメント、D:計画の実行、C:内部監査、A:マネジメントレビューというPDCAサイクルが機能するようにスパイラルに回すことが重要である。
「安全な製品の計画及び実現」のための要求事項
ISO22000要求事項の7章では、安全な製品を作るための計画とその実現について求めている。
具体的には、図3の事項が要求事項として求められているが、これらはHACCP手法に関するCodexガイドラインの7原則、12手順に沿ったものである。
(1)前提条件プログラム(PRP)の整備
ISO22000がシステムとして機能するためには、その基盤となるPRP(Prerequisite Program)をきちんと整備しておくことが重要である。
PRPとは、CodexのガイドラインにおいてPPと呼ばれているものと同じで、GMP(適正製造規範)やSSOP(衛生管理作業標準)などからなる。
これらは安全な食品を製造するために必要な、生産工場の施設・設備や製造に関する作業手順、従業員の教育などをルールとして定めたもので、前提条件プログラムという名称からもわかるように、HACCPを導入するにあたって、まず整備しておかねばならない事項である。
前提条件プログラムとして何を整備すればよいのかは、厚生労働省が総合衛生管理製造過程の承認制度で必要としている事項とほぼ同様である。筆者がHACCP手法の導入に関するコンサルティング時に出会うことの多いケースが、この前提条件プログラムが整備されていないにもかかわらず、HACCP手法を導入しようとして苦労するケースである。
例えば、前提条件プログラムは、建物を建てる時きちんとした設計をせず、また基礎工事も不充分なままで柱や屋根の工事をするようなものであり、このような状況でしっかりした家が建つはずはない。総合衛生管理製造過程では、図4に記載している事項について整備することを求めているが、いずれも日常の管理においてきちんと実施されなければならない事項である。
(2)ハザード分析とCCP設定の重要性
HACCP手法は、簡単にいうと図5のように表現することができる。「HA」とは、何が食品の安全上、危害の原因(要因)となるかを明確にすることである。このハザード分析がしっかり行われていないと、CCPで管理すべき事項の設定を誤ってしまう。数年前起こった大手乳業メーカーでの食中毒事件でも、このハザード分析が適切に行われていれば、あのような大きな事件にまで拡大することはなかったはずである。
また、重要管理点(CCP)は、製造過程で絶対ミスすることができない管理事項、言い換えれば管理上の目のつけ所である。加熱工程での温度、時間の管理や金属検出機の作動管理などがCCPとなるケースとして多いが、この管理事項をしっかり管理すれば、食品事故の発生が防げることになる。そこで、充分なハザード分析の上で、CCPを適切に設定することが重要となる。
時々あるケースに、ハザード分析が適当でなかったため、CCPの設定が正しく行われず、管理のポイントが狂ってしまっていることがある。現場のことをそれなりに知っているということで、正しいハザード分析の手順を面倒がって、自分の経験だけで行ってしまい、不適切なCCPの設定をしてしまわないように注意しなければならない。
(3)オペレーションPRPによる管理
ISO22000では、管理すべき事項として基盤となるPRP(前提条件プログラム)とCCP(重要管理点)に加え、新たにオペレーションPRP(OPRP)という言葉ができた。これらの関係を図6に示しているが、その概要は次のとおりである。
まず、該当する管理事項について危害分析を必要とするかしないかを判断し、危害分析をするまでもなく実施を必要とする事項である従業員の教育、施設・設備の整備、作業手順書の整備などのインフラストラクチャーの整備とメンテナンスについてはPRPとして扱われる。一方、危害分析を要する事項の中で、決定方式図(Decision Tree)による判断でCCPとして管理が必要とする事項についてはCCPとして管理する。さらにCCPとはならないが、モニタリングやその結果の記録、逸脱時の対応などが必要な事項については、オペレーションPRPとして管理することになる。
これらを具体的な例で説明すると、HACCP手法では製造過程の中に加熱殺菌工程や金属検出の工程などのように明確にCCPと判断できる工程がない場合、CCPとなる管理事項以外は前提条件プログラムで管理するとしている。しかし、ISO22000では、新たな考え方としてオペレーションPRPという考え方が出てきたのである。
オペレーションPRPは、簡単にいうとCCPのようにその管理だけで、危害の発生を防止することはできないが、工程でのモニタリングを実施、記録し、逸脱があれば改善措置を行なう必要がある管理事項となる。例えば、ハンバーグの混合肉温の管理は、煤焼機の加熱温度に影響を及ぼすのでモニタリングが必要となる。また、クリームコロッケの仕掛品の保管温度管理は微生物の増殖に関連するため、同様にモニタリングが必要となる。
このような管理事項がオペレーションPRPになり、このオペレーションPRPによって、従来のHACCP手法では不明確であったCCPとはならない管理事項の管理方法が明確に整理された。また、CCPでは許容限界(CL)を定めるが、オペレーションPRPでは管理基準のみを設定する。
また、PRPとオペレーションPRPとの違いは、図7のようになっているが、オペレーションPRPはほぼCCPに準じた管理が必要となる。
■図1 ISO9001と22000との違い
■図2 ISO22000の概念
■図3 安全な製品の計画と実現
■参考:HACCP導入の7原則と12手順
■図4 PRP(前提条件プログラム)の整備
■図5 HACCPの手法
■図6 CCPとPRPsの関係とOPRP
■図7 PRPとオペレーションPRPの比較
■参考:ISO22000の章構成
<アイソムズ 2006年7月号掲載>

