特集 食品安全マネジメントシステム ISO22000認証制度 スタート直前ポイント検証!
ISO22000をDISでいち早く認証取得、
「設計・開発」と「購買」を加えたシステムでCCPにさらなる歯止めをかける
大東食研株式会社 執行役員 深谷工場長 (HACCPチームリーダー) 中村 英之 氏
大東食研株式会社 品質管理部長 (ISO事務局長) 坂口 勝治 氏
大東食研株式会社 品質管理部ISO管理グループ長 (ISO事務局員) 清水 佳織 氏
大東食研株式会社 品質管理部ISO管理グループ (ISO事務局員) 白畑 絢子 氏
埼玉県深谷市に工場を持つ大東食研(株)は、ISO22000をいち早くDIS段階で認証取得した。600品目に及ぶOEM商品管理のための徹底した帳票管理や、ISO9001の「設計・開発」「購買」を加えたシステム構築など、今後ISO22000に取り組む食品メーカーにとって先駆的な好事例といえる。その取組み内容について同社深谷工場で話を聞いた。
600品目に及ぶOEM商品
本誌:最初に貴社の業務と、ISO22000認証取得の概要についてお教えください。
中村:当社は2005年で創業50周年を迎えた食品メーカーです。主な商品はスーパーマーケットやコンビニエンスストアに並ぶ各種麺類や総菜などに添付されている小袋の液体調味料など、納入先ブランドのOEM商品です。商品ラインナップは600品目、生産個数は年間2億食以上に及びます。
ISO22000については、2005年7月12日に(社)日本能率協会審査登録センターから、埼玉県の深谷工場を中心に全社を対象としてDIS版で認証取得しています。適用範囲は「深谷工場で製造するプライベートブランド製品の内、各種液体製品【つゆ、スープ、ドレッシング、ソース類】の開発、製造及び引渡しのすべての段階に適用する」となっています。
また、2006年6月1日~2日には、ISO22000への移行審査及び維持審査を受審しています。
顧客ごとに異なる衛生管理を標準化
本誌:ISO22000認証取得に取り組んだ経緯についてお教えください。
坂口:一番の理由は、食品安全の仕組みに対する第三者認証の取得です。
食品メーカーにとって、食品の安全・安心への取組みは生命線であり、当社も深谷工場において1997年からHACCPをベースとした品質管理に取り組んできました。しかし、当社の製品は「総合衛生管理製造過程承認制度(HACCP承認制度)」の対象食品ではありません。他社との差別化を図るためには自主的なHACCPへの取組みだけではなく、組織としてさらに高い食品安全性を確保できるシステムを構築し、第三者認証を取得する必要があるという結論に至りました。
当初はISO9001、ISO22000のいずれかを候補として考えていましたが、今までの取組みを活用できることから、最終的にトップがISO22000認証取得を決定しました。
中村:OEM商品の納入先である当社の得意先は約500社になりますが、その得意先からは原料の調合比率などのレシピだけでなく、顧客独自の衛生管理方法に準拠することが要求されることがあります。同様の製造工程で作られる商品でも顧客によって重点管理項目が異なるケースがあり、顧客ごとに手順や帳票が違うということが起こっていました。
しかし、衛生管理方法を比べてみると重点管理項目が微妙に異なるだけで、結局顧客の目指すところは同じです。それならば当社から衛生管理方法を提案し、取引先に採用していただく方が効率的です。そのため、当社の衛生管理方法が第三者の審査によって信頼性を担保することが必要となりました。
本誌:推進体制についてお教えください。
中村:HACCPへの取組みは製造現場中心で、工場以外の部門が関心を持たないという反省がありました。しかし、ISO22000は全社での取組みが必要不可欠です。そのため社長自身がISOプロジェクトリーダーとなり、サブリーダーに生産本部長と深谷工場長である私の2名を任命して全社一丸の取組みをスタートさせました。
ISO22000の要となるHACCPチーム(食品安全チーム)も、品質保証部や研究員中心ではなく、製造、品質管理、生産事務部門の各部門長も含めて組織されています。
帳票管理の徹底
本誌:システム構築はどのように進めましたか。
清水:事前準備として規定、帳票類の整理から始めました。先述のとおり製造工程が同じでも顧客の衛生管理に対する要求が微妙に異なり、現場ごとに帳票が氾濫しているという状況だったため、全体でどれだけ帳票が存在するかもわかりません。そのためすでに運用していたHACCP文書を含め、社内のあらゆる文書の提出を各部署にお願いしました。しかし、集まった帳票類を見ると同じ目的で使用しているものが何種類もあり、また最新版と旧版が混在している状態で、3ヵ月ほどかけて帳票を業務プロセスごとに分類しました。
HACCPの経験からも、社内規定とISO22000の文書が二重に存在する可能性もあったため、文書の洗い出しと整理は徹底して行いました。その結果、製造部門だけでも350種類あった帳票を210種類にまで削減することができました。
危害分析に基づく工程の4分類
本誌:危害分析については。
中村:危害分析の結果、工程全体でリスクが高いと評価されたのは微生物、つまり食中毒などにつながる細菌の発生と異物混入で、CCP(重要管理点)と管理方法は図2のようになります。
しかし、商品自体が600品目あり、これが1年間で7割も入れ替わります。例えば、コンビニエンスストアでは2ヵ月くらいで商品が入れ替わっています。しかも翌年は新商品になりますから同じレシピはほとんどありません。もちろんスープ類ですからレシピも製造工程も大幅に変わるものではないのですが、商品が入れ替わるたびに危害分析を行うことが要求されます。
そこで工程をパターン化し、四つに分類しています。大きくは、液体スープを希釈して使用する濃縮タイプと、そのまま使えるストレートタイプに分け、さらに70℃以上の状態でのHOT充填、冷却した状態でのCOOL充填に分類します。
これは食品安全性の面から見た分類であり、商品数が600品目あっても安全管理の面ではいずれかのパターンに収まるということです。
「設計・開発」と「購買」
本誌:貴社ではISO22000の要求事項に「設計・開発」と「購買」も追加してシステム構築しているそうですが。
坂口:ISO9001とISO22000のどちらに取り組むかという議論で、ISO22000にはISO9001でいう「設計・開発」と「購買」がないことに注目はしましたが、当初入れる予定はありませんでした。工程上の危害はHACCPプランの中で解消でき、さらに一般衛生管理も含めISO22000で製造ライン上の食品安全は確保できると考えていたからです。しかし、その製造ラインに入ってくる原材料の食品安全はどのように管理するのかという疑問が出てきました。
そこで「購買」については「製品・原材料管理規定」を設けています。
当社のようなOEM商品の場合、顧客から原料を指定される場合があります。しかし、顧客の指示どおりに作っても、できあがった商品にトラブルが起きると当社の責任になります。そうなると原料の購買管理をせずに食品安全管理はできないということになります。
本誌:「設計・開発」については。
中村:商品設計に関する「商品開発管理規定」を設けています。
OEM商品といえども、すべての商品を顧客のレシピで作っているわけではなく、当社オリジナルのレシピを提案して採用していただく場合もあります。
微生物制御は製造工程での殺菌や冷却だけではなく、商品成分の塩分濃度、pH値(酸性、アルカリ性を示す値)、水分活性(Aw:微生物が利用できる自由水の割合)の組み合わせでも制御します。その規格値の決定は商品開発段階で行い、その組み合わせにより、製造工程での殺菌温度や冷却温度も決まり、CCPで管理することになります。
したがって、製造はレシピどおりに作ることが大原則ですから、もし塩分濃度、pH、Awという三つの微生物制御因子が充分機能を果たしていなかった場合に、CCPの殺菌工程・冷却工程だけでは危害が防げない可能性があります。そのため商品開発プロセスにも食品安全を達成するために必要な事項があると考えました。
ただこれは、設計・開発機能を持つ食品メーカーがISO22000に取り組んだ場合には、必ず直面する問題ではないかと思います。
清水:ISO22000は、設計・開発が間違っていないことを前提として要求事項を設定していますが、現実には間違えることもありえるわけです。当社の場合、商品のサイクルも短く、開発に時間をかけられない場合もあります。その中で歯止めの一つとして管理しておく必要もありました。
“本物志向”のリスク
本誌:商品開発におけるリスクも高いと。
中村:食品産業全体が“本物志向”になっています。以前であれば、そばつゆの出汁は加熱処理で微生物制御された均一な成分のエキスを使用していました。しかし、最近では、工業的に作ったエキスは使うなという注文が多くなってきています。生の原料を使って抽出する、それが本物の味だということです。
その結果、典型的な傾向として濃縮商品よりもストレート商品が多くなっています。濃縮商品は塩分濃度が18%くらいありますから微生物が繁殖しにくいのですが、ストレート商品は塩分濃度が2%くらいしかありません。放っておけばすぐに腐敗します。顧客のニーズは長期保存型よりも、新鮮な材料を使い、防腐剤などの添加物を入れない“生”の商品に近づいています。その点でも商品開発段階での規格値の設定はリスクが高く、影響が大きくなってきました。
クレーム削減が大きな成果
本誌:DIS版取得から約1年ですが、運用の効果はいかがですか。
中村:一つの成果としてクレームが減ったことがあげられます。2005年度の集計では前年対比で約4割減っています。クレームの多くは破袋やピンホールなどの液漏れですが、これ以上にもあってはならないものとして異物混入クレームがあります。異物混入は商品イメージを大きく損ない、お得意様やお客様に大きな損害を与えてしまいます。
そのため、毛髪除去のローラーがけ、白衣の改善、出入口の二重化、衛生検査員の設置、異物除去のためのストレーナ・マグネット管理の徹底、防虫・防鼠対策など、細かなPRPを積み重ねてきたことが大きな効果として現れたと思っています。
本誌:そのための社員教育は、どのように取り組まれましたか。
清水:教育プログラムとしては、経営層、社員、そしてパートタイマー、アルバイトまで含めた全従業員対象の研修会を開催して、全社的な雰囲気を盛り上げたりもしましたが、特に効果的だったのは「ISO22000 NEWS」の発行です。これはISO22000やHACCPについての解説や取組み予定などを紹介した社内報として毎週発行しました。認識が低い思われるポイントを中心に、ISO22000でどのようにリスクが軽減されるのかを、イラストや写真などを多用し、わかりやすく解説することができたと思います。
自社ブランド品への認証拡大も
本誌:最後になりますが、今後の抱負についてお聞かせください。
中村:移行審査も終わり、正式なISO22000認証ということになりますが、当初の目的であるISO22000を前提とした新規受注も徐々に出てきました。また、工場長としては最終目標であるクレームゼロを実現させるための手段としてもフルに活用したいと思います。
大手メーカーでもなく、築40年近い建物で、頻繁に替わる生産品目に追いかけられている工場であっても、やればできることを見て欲しいという思いもあり、今回の取組みをベースとして将来的には認証範囲を自社ブランド品にも拡大していきたいと思います。
坂口:ISO22000に取り組むことで、現場の共通認識が高まったことが大きいと思います。その意識を持続させていくことが事務局の役割であり、そのためには、できるだけ現場に負担をかけないような仕組みにしていかなければいけないと思っています。なおかつクレームが減り、効果が上がるような仕組みにしたいと思っています。
清水:衛生管理、ルールを定着させていくためにどのような情報提供を行えばよいのかをさらに考えていきたいと思います。部署ごとの目線、レベルに合わせた細やかな教育や情報提供を行うことで効果を上げていきたいと思います。
白畑:昨年入社したばかりで、食品会社勤務もISOも初めてですから、わからないことはたくさんありますが、ISO管理グループにいることで製造や営業など、全体を漏れなく見ることできます。その視点からどのプロセスが滞っているのか、問題があるのかを理解し、早く改善提案までできるようになりたいと思います。
本誌:本日は貴重な事例をお話しいただき、ありがとうございました。(取材:アイソムズ編集室)
■図1 大東食研・深谷工場のHACCP関連文書体系
■図2 大東食研・深谷工場におけるCCP
■図3 社内教育に活用した「ISO22000 NEWS」
<アイソムズ 2006年7月号掲載>

