2006年7月号 特集(6)

特集 食品安全マネジメントシステム ISO22000認証制度 スタート直前ポイント検証!

まずは業界出身の審査員を増やし、フードチェーン全体の安全を確保する

財団法人食品産業センター 評価登録室 大西 吉久 氏
財団法人食品産業センター 評価登録室 堤原 啓治 氏
財団法人食品産業センター 評価登録室 円城寺 輝行 氏

加工食品製造業者の業種横断的団体である食品産業センターは、日本食品安全マネジメントシステム評価登録機関(JFARB)を設立した。JFARBは今後ISO22000の審査員評価登録と審査員研修機関承認業務を行う。審査のスキームを定義するISO/TS22003が未だ発行されず、認定機関になるJAB(日本適合性認定協会)から詳細が発表されていない中で手探りの段階ではあるが、現在の取組み状況について立上げメンバー3氏を訪ね、話をうかがった。


フードチェーン全体が対象に


本誌:貴センター本体は、加工食品以外は対象外ということですが。

大西:生鮮や流通は私どもの範疇ではありません。ただし、ISO22000は“From farm to table”(農場から食卓まで)が範囲ですから、センター本体は加工食品製造業の団体であっても、私ども評価登録室ではすべての食品関連業種を扱います。審査を見てみると加工業では原材料に生鮮があり、川下には流通分野があります。したがって審査員は業種横断的な立場から、すべてを知っておかなければなりません。そんなこともあって、私どもが審査員評価登録機関に名乗りをあげたのです。

本誌:加工食品といいますと、一般に関心の高いBSEは、財団としてはそれほどかかわりがないのですか。

大西:BSEは生鮮の分野ですが、原材料としての影響はあります。牛肉を使った加工食品にはビーフカレーなどがありますが、じつはそれほど多くはありません。それよりもエキスを調味料で使う加工食品が半分以上あるのではないでしょうか。従来は牛骨から取っていたものもあり、大きな影響を受けました。

堤原:食品表示、BSE、残留農薬やトレーサビリティなど、食品産業にかかわる横断的問題は積極的に取り組みホームページなどでも情報発信しています。時事問題については傘下業種団体・食品企業などと密接な連絡を取りつつ諸課題の解決に取り組んでいます。

本誌:外食産業まで入ると、対象はとてつもなく大きくありませんか。

大西:そうですね。しかし、審査を行う評価委員会には外食の人も流通の人も農業の人も製造業の人も行政も入る予定ですので、各専門分野のご意見を十二分にいただいて評価します。

本誌:さて、機関を開始されて。

堤原:ISO/TS22003が発行されていない状況ですが、業界内では早く取りたいという要求がありますから、決まっていない中でも推察しながら作っていかなければならず、忙しいです。

大西:基準などは公表されてはいますが、普段要求事項とか規格というものにあまりなじみがないですから、頭に叩き込むのに苦労しています。

本誌:法律と違って強制力もない。

大西:そこも大きいですね。私どもは農林水産省の外郭団体ですから、審査員評価登録を行うには誰の許可が要るのかと、これは民間の仕組みで、やるやらないは勝手だといってもなかなか理解してもらえませんでした。

本誌:ISOを、官の機関と勘違いされている人もいますね。

大西:食品の世界では国際規格で強制力もあるCodexがありますが、あれは官ベースの委員会です。Codexの考え方にはISOと相容れないところもありますがCodexとISOの規格が同じと思う人もいます。

待たれるISO/TS22003の発行


本誌:ISO/TS22003の規格が発行されないとISO22000そのものも正式にはなかなか動き出せないですが、発行予定は9月1日に出そうですか。

堤原:5月4日付けISO/DTS22003.ドラフト2版から投票が2ヵ月・・・ちょっと難しいですね。

大西:今後どれだけコメントが出るかですね。前回は大量に出ました。そこから最低でも1ヵ月はかかるでしょうから、厳しいでしょうね。

本誌:ISO/TS22003の動向を見ながら仕組みを作っていく状況ですね。

大西:ええ、DTSを見ますと、Annex.Bの微妙な言い回しなどが少し変わっています。それに合わせてこちらも少し変えようかと考えています。その他まだ不充分なところもあり、まだコメントが出そうです。

本誌:内容もまだ流動的だと。

大西:ええ。われわれにもっとも関係する審査員の資格のところですから、先日の開発委員会のワーキンググループでも、教育(Education)のところで、equivalent to(同等)がcorresponding to(相当)に変わっていますが、そもそも意味合いが違うではないかと。これまで「これでなければいかん」「これと同じもの」といっていた部分が、「これ、またはこれと類似するもの」では、随分窓口が広がったように見えます。

ISO/DTS22003ドラフト2版では基礎微生物学とか基礎化学、その上にこの分野の人は動物学だとか食品化学と食品加工をやれ、と細かく書いてあるかと思うと、その下のG to Kでは、それに関連する何でもいいから、という書き方です。その辺をどう解釈するかですね。このAnnex.Bの書き方は、審査員資格評価時に影響が大きそうです。

食品業界人が審査員にふさわしい


本誌:食品関係の審査員となりますと、より厳しいものが求められる。

大西:先ほどのcorresponding toを、業務経験の中で関連する知識があればいいと解釈すればISO9001に近いですが、それでも学問の指定など、ハードルは高いです。ただ、学卒で食品製造に携わっている方々は、大抵どこかの分野に該当します。食品をまったく知らない審査員よりは、食品製造に携わった人の方が早道ですし、そういう人が入ることで食品安全衛生の担保がより確実になるでしょう。それが開発委員会委員の方々の意見でもあります。食品業界の方に審査員になってもらいたいからこそ、当センターが審査員評価登録機関になったという面もあります。

堤原:食品を経験していないとCCPやPRPもわかりにくいでしょう。食品経験者が一定の水準で審査員になれることは、歓迎すべきことだと思います。

本誌:主任審査員がリーダーとして審査を取り仕切りますが、審査経験が必要なため、ゼロから始めると、なかなかそこまではたどりつけません。最初は他のマネジメントシステムの主任審査員の横すべりになるのでは。

大西:食品の安全性を担保するのは、食品のわからない人が聞きかじってやるというのは困難です。したがって業務経験5年は不可欠です。

本誌:主任審査員こそ業界の人に、と考えますと、暫定措置も必要では。

大西:開発委員会でも暫定措置を考えています。業務経験はきちんと見ていかないと、世の中の期待を裏切るおそれがあります。業務上知り得た知識の証明は、できるだけ何をやったかを詳細に書いてもらい、専門的知識については研修コースの修了証か論文提出にしたいと考えています。

堤原:まずは審査員を増やし、その人たちが経験して主任になり、フードチェーンの安全を確保するのが最終目的です。したがってあまり最初から狭き門にはしたくはないです。

本誌:ISO9001でも、優秀な審査員ほど、時間があれば審査員向け研修などを受講して力量を磨いています。

堤原:個々人が切磋琢磨していただく形が一番望ましいですね。

内部監査員は全員取得を


本誌:内部監査員については。

大西:内部監査は各企業で独立的立場の人でいいのですが、その人材としては審査員評価登録を受けた人がやっていただければ一番いいと思います。だからこそ第一者監査などにも対応できる人材と定義しています。

本誌:ISO9001でも、一部先進のメーカーではマネジメントシステムが充分機能し、内部監査体制も万全で、審査は第三者の確認を得るためのものだというところもあります。

大西:それが理想です。各企業はまずISO22000を適用してマネジメントシステムを定着させ、さらに向上するために認証も取っていただきたいというのが食品産業センターとしての立場です。ISO22000を自社に適用する段階で、この審査の仕組みや規格を十二分に理解した審査員有資格者が内部監査を正確にやっていただく方がいいでしょう。私どもは昨年農林水産省のISO22000普及事業を行いましたが、審査を受けることが目的ではなく、ISO22000を適用し、より安定したマネジメントシステムを企業内に定着させていただくことを望みます。

堤原:第三者評価を受けた審査員が内部監査を行うのが社内的にも説得力があり公平性、透明性もあります。

円城寺:問題は、内部監査の機会を会社が与えるかどうかです。審査実績がない審査員補ばかり作っても仕方ありません。ISO9001では社内で経験が積めないから審査登録機関の審査に加わり経験を積んでいる例もあります。

本誌:内部監査はベテランがいい。

大西:社内で独立した立場なら20代でもかまいません。理想をいえば、内部監査員全員に審査員資格があれば、いい内部監査が行えるでしょう。

堤原:各企業がISO22000をどうとらえるかです。審査員の数も内部でどのように活用するかも、トップマネジメントの問題ですから。仕組みがオープンになれば浸透するでしょう。ISO9001は全産業が対象です から食品業での取得率は3%程度、ISO22000は100%食品産業(フードチェーン)が対象です。今はどこへ相談に行けばいいのか、審査員もいないという状態ですが、今後各企業がトップを含めどう考えるかです。第二者監査も今後は審査員資格のある人がやれば公平に行えます。

大西:もう一つ、HACCPは食品衛生法第13条の総合衛生管理製造過程の厚生労働大臣承認制度(マル総)が唯一公の承認制度ですが、容器包装詰加圧加熱殺菌食品(缶詰、レトルト食品など)、魚肉練り製品(かまぼこなど)、乳・乳製品、清涼飲料水など5業種6食品に限定されていて、これ以外ではHACCPをいくらやっても公式には認めてくれませんでした。民間の審査登録機関で ISO9001+HACCPをとってもHACCPそのものではなく、ISO15161に基づいてISO9001をとっても公認のHACCPではないのです。今回のISO22000で、民間の制度とはいえHACCPが初めて公式に国際的な認証システムになりますから、各企業が取り組む意味が出てきます。ISO22000とHACCPはイコールではありませんが、少なくても中心です。今後はJABのマークなり認証機関のマークなりをつけてHACCPへの取組みを宣言できます。その時、12原則「HACCPチームの編成」のHACCPの知識がある人として審査員資格を持った人がいれば、HACCPもマネジメントシステムもわかるプロフェッショナルだと公にできます。

堤原:物流・保管など、その他のフードチェーンではISO14001はとってもマル総は取れませんから、HACCPをやっているといってもそれだけに終わりましたが、 ISO22000取得は意味があります。

本誌:根付くのには時間がかかる・・・。

大西:取るべきところは早いでしょうが、審査員が少ないですから追いつかないでしょうね、間に合わないほど取得してくれるならありがたいです。

本誌:認証取得企業は多そうですか。

円城寺:ISO9001の場合はじめの頃は認証取得企業数が審査員登録者の約2倍という状態が数年続きましたが、今はもっと増えています。IRCAのある機関の研修コースはすでに200人修了していますから、3機関で600人とすると、最初は1200社くらいでしょうか。ISO14001も、最初は取る人がいるの? という話でしたが、現在認証企業は2万強で審査員が1万強となっています。

本誌:審査員の質も問われますね。

大西:開発委員会もそこを気にしています。市場の目がありますから。

円城寺:審査員資格を取るだけではだめですね。

本誌:最後に今後の動きは。

大西:やらなければならないことはたくさんあります。近々にホームページを立ち上げて審査員資格のDTSによる改訂部分を入れます。また、JFARBとして運営委員会を6月21日に実施して事業の進め方をきちんとして、引き続いて判定委員会、評価委員会を立ち上げる予定です。審査員申込者はすでに30人いますが、評価委員会に2ヵ月以内にかけるルールですから、7月には1回目を開かなければいけません。一方審査員評価登録申請説明会を関西で行う予定です。

円城寺:そして、JABが認定受付を開始したら申請する予定でいます。

本誌:JABの発表は。

大西:10月すぎるのではないでしょうか。ISO17024に基づく2年間の猶予期間が今年の年末で、それがJRCAとCEARの期限と聞いております。私どもが申請したら、ISO17024として第一号の認定になるかもしれません。

本誌:本日はご多忙の中、貴重なお話をありがとうございました。(取材:アイソムズ編集室)

図1 ISO22000適合性認定の仕組み(予測)

■図1 ISO22000適合性認定の仕組み(予測)

図2 審査員評価登録のフロー

■図2 審査員評価登録のフロー

<アイソムズ 2006年7月号掲載>

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