2006年7月号 特集(7)

特集 食品安全マネジメントシステム ISO22000認証制度 スタート直前ポイント検証!

CCPとOPRPの設定とモニタリング、OPRPとPRPの区別などがポイント

日本海事検定キューエイ株式会社 取締役安全調査部長 佐藤 信一 氏

1993年に国際的総合鑑定・検定機関である(社)日本海事検定協会を母体に設立された日本海事検定キューエイは流通業を中心にISO9001、ISO14001などの審査登録機関として約90名の審査員を東京本社、関西支社、九州支社に配置し、展開している。ISO/TS22003が未発行の段階ではあるが、今後、ISO22000の審査登録業務を第三の柱とすべく取組中の佐藤取締役を訪ね、話をうかがった。


食品業界からは熱い期待が


本誌:まずISO22000への取組みは。

佐藤:私どもでは4年前からHACCPの審査登録を行っていました。その経験を活かしISO22000のFDISが出たときから準備を始め、現在ではISでのプライベート認証を開始しております。

本誌:フードチェーンでの反応は。

佐藤:私どもに対するコンタクトはかなりの数です。食品メーカーは当然ながら、私どものお客様に流通関係が多いからかもしれませんが、とりわけ倉庫・運輸業界での関心の高さをひしひしと感じています。大半は既存のISO9001、ISO14001のお客様ですが、新規も一部あります。

本誌:現在の認証件数は。

佐藤:全国の大手食品メーカー4件です。そして現在審査中が1件です。

本誌:貴社の顧客である流通業界では、もはやISO9001とISO14001があるのは当然で、さらにISO22000を取るという段階ですか。

佐藤:ISO9001の方が多いですね。流通業界は、ISO9001も、ISO14001もメーカーよりも1テンポ遅れてスタートしました。したがってISO14001は、まだこれから取得するというところも多いです。

本誌:ところでISMSは。

佐藤:じつはJIPDECのISO27001審査登録機関として審査登録業務を開始すべく、現在準備中です。

本誌:ISO27001と22000、どちらが三番目の柱になりそうですか。

佐藤:私どもの場合は、物流や食品会社というお客様の登録が多いため、ISO22000が多いように感じます。

品質面からISO9001は必要


本誌:審査登録機関の立場でみて、ISO22000の特徴は。

佐藤:やはり食品の安全という面に特化していますので、社会のニーズに合う規格だと感じます。ただ、安全に特化しているあまり、品質に関する面があまり見受けられませんので、そういうことからいうと、この規格だけでは充分とはいえません。組織がエンドユーザーの要求をかなえるには、ISO9001との統合がベターではないかと考えています。

本誌:ここでいう品質の欠如とは、「腐ってもいないし、食べてお腹をこわしたりはしないけれども、おいしくない」といったイメージですか。

佐藤:そういうことです。

本誌:これまでISO9001やISO14001を導入していない組織がISO22000を導入しようという場合、もちろんコストの面などもあるでしょうが、ISO9001も一緒にと勧めることになりますか。

佐藤:そうですね、それが望ましいことだと思います。

本誌:ISO9001を先に導入した方がいいとか、同時並行でいくほうがよいということはあるのでしょうか。

佐藤:私どもとしては、どちらが先かということは考えておりません。あくまでも組織のニーズによります。

本誌:まったく新規の顧客の場合、ISO9001が何か、マネジメントシステムやPDCAサイクルが何かもわかりませんから、理解していただくのは大変では。

佐藤:ISO22000というニュースが先行し、ISO9001という概念を知らないでお話をされる方は、話の中で少しぎくしゃくすることはあります。ISO9001の話をある程度理解していただければ話がスムーズに展開できるのですが、前提なしにISO22000に飛びついてしまわれると、理解いただくのが大変だと思われます。

本誌:ISO9001やISO14001を取られているところであれば、ああ品質に環境を乗せた時みたいに、今度はこうやって食品安全を乗せればいいのだなと、割とスムーズにいけると。

佐藤:私どものお客様の場合は、スムーズに取り組んでいらっしゃいます。

本誌:初心者の方が一番わかっていない、間違っている点は。

佐藤:ISOマネジメントシステムをご存知でない方は、製品認証と誤解されているケースがあります。

本誌:ISO14001では、取引条件になったから取得しなくてはならないというケースが多かったと思いますが、ISO22000の場合も同じですか。

佐藤:ISO22000も、フードチェーンの中でバイヤーさんからの要求は無視できないように感じます。バイヤーさんが、自分たちでやっている第二者監査というものをより平易化する、確実なものにしていくために第三者の力を上手に利用する、そして商品を安全に消費者に提供するという流れが見受けられますね。

本誌:バイヤーさんも、うちのチェーンはすべて安全ですといえなければ、消費者の納得を得られない。

佐藤:そうでしょうね。それがフードチェーンという問題の特質の一つだと思います。

本誌:やはりBSEとかトレーサビリティとか残留農薬といった事件への世の中の注目が根本にありますか。

佐藤:ええ、そういうものをかなり敏感に反映しているようです。

本誌:ISO22000の審査は、どのくらいの期間になりますか。

佐藤:ISO9001と同じくらいですね。

本誌:ハザード分析に関する具体的な要求事項や食品安全に関する検証についての要求事項が多いので、審査工数が多いのでは。

佐藤:ハザード分析に関しましても、ISO14001の環境側面の抽出やリスクマネジメントの考え方に似ていますから、今までのケースでは大きな違いは見受けられませんでした。

本誌:費用もあまり変わらない。

佐藤:設備を改造すると費用が増加しますが、私どもではできるだけソフトを重視した審査をしたいと心がけていますから、それほどの設備費用の増加は見受けられませんでした。

本誌:ソフト重視といいますと。

佐藤:以前のHACCPでしたら、設備の改造を勧めますが、規格に基づいた要求ということになれば、そこに焦点を絞っていけばハード面での大幅な変更はなくても済みます。

本誌:受審企業では、ISO22000の担当は従来のISO9001の担当と同じことが多いでしょうか。

佐藤:ほとんどはISO9001をしていた部署が担当ですね。また、その方が理解しやすいと思います。

本誌:そうすると、今後はマニュアルの一本化など、統合しやすい。

佐藤:今のところ一本化まではいかず併用の形でスタートしていますが、今後は品質と環境同様、統合に向かっていくことは想像に難くないです。

審査のポイントはCCPやOPRP


本誌:実際に審査されてみて、何がISO22000審査のポイントですか。

佐藤:やはりCCP(Critical Control Point:重要管理点)とオペレーションPRP(OPRP)をどこに定めて、どのようにモニタリングしているかというところに気を遣っています。

本誌:この設定がいい加減になるとシステムが回らないということですね。

佐藤:そういうことです。

本誌:ISO9001+HACCP=ISO22000であるかのようにいう人もいます。先ほど、ISO22000だけでは品質の考え方が欠落しているというお話がありました。HACCPがマネジメントシステムになったけれども、ISO9001の肝心な部分が抜けているということでしょうか。

佐藤:当初、詳細がわからないときはISO9001+HACCPかと思っていました。規格策定段階でISO9001の要素を入れてほしいという日本の要望は残念ながら受け入れられず、HACCPにISO9001の支援業務、文書管理やマネジメントレビューなどをくっつけただけという形ですね。

本誌:実際に審査されてみて。

佐藤:先ほどのCCPの決定に関して、私どもの考え方と合わないケースや、オペレーションPRP(OPRP)と一般PRPが混合しているケースが見受けられました。

本誌:その辺はISO22000固有の問題なので、ISO9001を構築運用されてきた方でも、はまる部分ですね。

佐藤:そうですね。そこの部分だけは、ISO9001に精通された方でも戸惑うケースがあります。

審査員は食品業界と規格の他に法律も


本誌:審査員は内部に10人ほどいらっしゃるそうですが、ISO9001審査員などが多いのでしょうか。

佐藤:私どもは両方やっています。ISO9001からスライドする人と、ISO9001にまったくかかわったことのない、食品の製造に携わっていた人ですね。その人たちにISO22000の審査員として私どもとジョイントしてもらい、チームで審査をします。

本誌:審査制度の詳細などは今秋といわれているISO/TS22003の発行が待たれますが、主任審査員は経験が必要ですから、当初はISO9001などの審査員しかいないですね。

佐藤:資格要件としては整わなくても、審査経験そのものは多いですから。ただ、生物的危害などの知識も重要ですから、特別な勉強会を頻繁に行っています。

本誌:食品業界からの応募は。

佐藤:あまりいらっしゃらないので、私どもからお誘いする状態です。食品経験者がご自分で資格を取って応募してくるケースは多くはないです。

本誌:フードチェーンは範囲が広いですが、この審査に必要な専門知識がある製造についての経験者となると、該当者は少なそうですね。

佐藤:そうです。まだ日本中みても食品の専門家としての審査員という人は少ないのではないでしょうか。

本誌:世間で食品安全に対する目が厳しく、また内部監査員も必要ですから、企業も専門家は手放さない、当然利害関係もあって受審企業から引き抜くわけにもいきません。

佐藤:ええ。そこで私どもでは食品メーカーに長く勤められ、リタイアされた方とご一緒して、審査とは何かというところを理解していただいて、経験を積んでいただくケースが多いです。名の通った会社で経験を積んだ審査員には説得力もあります。

本誌:ISO22000では関連する法令・規制事項を満たすことも要求されています。ISO14001同様、法律が多く大変そうに感じますが。

佐藤:けっこう難しいですね。数が膨大ですから理解していくことは並大抵でなく、改正があれば知識のアップツーデートも必要です。

本誌:ISOは20代の若い審査員が少ないですが、やはり業界経験者でないと務まらないものですか。

佐藤:業界経験者は基礎ができていますから、規格要求事項を学んでいけばいいわけです。両方勉強していくことはかなり重労働でしょう。

来年から多くの業種で認証取得か


本誌:今後の抱負は。

佐藤:従来のHACCPは食品製造業者の視点でしたが、今度はフードチェーン全体が対象ですから、これまで知らなかった業界も対象になります。現在の認証組織は4件とも食品メーカーですが、今後はその他の業種が増えるでしょう。未知の業種でISO22000審査はどうあるべきか、内部で検討会をするなどしてスキルアップしたいと考えています。

本誌:フードチェーンは、農業、外食など様々ですね。

佐藤:外食もクッキングがありますから、そこでどう安全を確保するかは重要なファクターであり、今後この方面もISO22000に興味を抱くと考えられます。この他、食品製造会社の機械を作っているメーカーや防虫防鼠の洗浄剤メーカーなどもどういう取組みをするのか、など裾野は大変広いといえます。

本誌:フードチェーンの中で「この1社だけ、食品安全はだめです」というわけにはいかないでしょうから、芋づる式に取得することになるでしょうね。

佐藤:来年から、かなりの勢いで認証取得が増えそうな予感はしています。

本誌:本日はご多忙の中、ありがとうございました。(取材:アイソムズ編集室)

図1 審査登録手順

■図1 審査登録手順

図2 3規格の対比表(主な規格条項抜粋)

■図2 3規格の対比表(主な規格条項抜粋)

図3 フードチェーン

■図3 フードチェーン

<アイソムズ 2006年7月号掲載>

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