特集 QMSを超えて「顧客拡大」を成功させる方法

特集 QMSを超えて「顧客拡大」を成功させる方法

顧客拡大のために「一貫した製品/サービス提供の保証」と
「顧客満足の向上」をいかに品質目標とするか


有限会社 ロジカル・コミュニケーション 取締役社長 有賀 正彦 氏

ここまで顧客拡大のためのQMSを超えた取組みについて、その考え方を見てきたが、ISO9001の範囲で「顧客拡大」を念頭においた取組みを展開することはできないだろうか。少なくとも現在のマネジメントシステムを工夫することで、社員の意識向上や方針の徹底を図ることは可能ではないだろうか。そこで具体的な行動目標となる「品質目標」に顧客拡大の概念を盛り込み、展開する方法について、本誌ではおなじみの有賀氏に解説をお願いした。


はじめに


企業がISO9001を導入する理由は、「企業体質強化のため」「業務改善のため」「社員教育のため」「商取引上の要件となっているため」「社内外に対して経営の透明性を持たせるため」「時代の変化に常に対応できる会社の仕組みを作るため」「人の入れ替わりに左右されない経営システムを構築するため」「顧客の満足を常に向上させて行くため」など様々だと思われる。

もちろん、地場の公共工事オンリーの業態のように縮小傾向にある業界において「これからは業界として従来のビジネスモデルにおいては明るい兆しはまったくなく、新商品開発や技術革新に取り組む能力も資源も意欲もまったくなく、顧客や受注機会が増える可能性もほとんどなく、現在の業務をいかに効率的に運営(マネジメント)して従業員を喰わしていくか」という企業もISO9001を取り組む企業の中にはあると思う。

しかし、多くの成長を目指している企業にとって「顧客拡大」は永遠のテーマであると思う。

顧客拡大は品質目標になりえるか


顧客拡大には大きく分けて、
・新規の顧客を増やす
・既存顧客の購買額と購買回数を増やす
という方法がある。

また、顧客拡大と密接に関連するテーマとして「売上げアップ」がある。

一般的に企業が売上げを向上させるためには三つの方法がある。

すなわち、
(1)顧客を増やす
(2)客単価を上げる
(3)一人当たりの顧客の購買回数を増やす
である。

つまり、「顧客拡大」を企業の目標として掲げた場合は、上記(1)~(3)に関連する「判定可能な目標」を計画すればよいことになる。

(1)~(3)に関する品質目標を事例で挙げるとすると、
・新規顧客数
・成約率
・リピート率
・受注あたりの金額
・顧客ごとの年間購入件数
などが考えられる。

ただ、ISO9001認証制度の枠組みで考えるとなると、「顧客拡大(売上げアップ)」と「ISO9001を適用する組織に規定されている適用範囲の二つの規定」、つまり、
a)顧客要求事項及び適用される規制要求事項を満たした製品を一貫して提供する能力を持つことを実証する場合
b)品質マネジメントシステムの継続的改善のプロセスを含むシステムの効果的な適用、並びに顧客要求事項及び適用
  される規制要求事項への適合の保証を通して、顧客満足の向上を目指す場合
とつながりを持たせることが必要になる。

つまり「顧客拡大」=「一貫した製品/サービス提供の保証」と「顧客満足の向上」が保証される必要がある。

品質目標として例に示したような、新規顧客数、成約率、リピート率、受注あたりの金額、顧客ごとの年間購入件数などを設定した場合、例えば「新規顧客数の増加」が達成されても、「既存顧客の購買金額や購買回数」が減少していては「顧客拡大=顧客満足向上」とはなっていないかもしれない。

「売上げの増加」も単純に考えれば「顧客の満足度が向上した結果」と見ることもできるが、「購入せざるを得ない人が、単価が上昇したので増加しただけ」だったとするのであれば、とても顧客満足度の向上とは結びつかない。

プロセスの監視・測定、データ分析の活用


「顧客拡大」に関連する目標を設定する場合は、「一貫した製品/サービス提供の保証」と「顧客満足の向上」も担保されているのか否かを監視する必要がある。

規格要求事項でいえば、8.2.3や8.4の活用である。

「顧客拡大」の達成指標として新規顧客数や成約率、売上げなどを設定したとするなら、同時にプロセスの監視・測定項目として、例えば、
1)売上げなどの監視・分析(上得意客/得意客/新規客/休眠客)
2)クレーム・要望の監視、分析
3)製品/サービスがターゲットと整合しているか(購買層分析など)
4)顧客ごとの年間購入件数
をあわせて実施して、顧客拡大がISO9001の適用範囲の二つの規定を担保し、相反していないことを監視していく必要がある。

品質目標達成の考え方


ISO9000では「品質目標」について、「品質目標は、通常、組織の品質方針に基づいている。品質目標は、通常、組織内の関係する部門及び階層で規定される」と定義されている。

また、ISO9001の5.4.1、5.4.2では「品質目標判定可能」「品質目標を満たすために品質マネジメントシステムの計画が策定される」と規定されている。

つまり大雑把にいって品質目標は、
1)品質方針と整合し、達成度が明確である
2)品質目標達成のための具体的なアクションプラン(行動計画:行動内容と日程、責任者、必要な資源)が明確である
3)全部門において品質目標はなんらかの形式で設定されている必要がある
ということになる。

しかし、例えば、「休眠客の20%を得意客にする」という品質目標を設定した場合、「目標達成の行動計画」は、
・休眠客フォローのDM作成
・顧客別のフォロー方法の確立
・顧客フォロー方法のITシステムの構築・導入
などが計画される。

目標は明確でも、達成のための手段とその計画の監視と監視結果に基づくフォローが明確に計画されていないケースが多いので注意が必要である。

顧客拡大に直接責任を持たない部門の品質目標


しかし、その場合、顧客拡大に関する責任と直接的に関係が薄い部門ではどんな目標を計画すればよいのか? という問題がある。

その場合は、「顧客拡大を達成するために間接部門ができること」が目標になる。すなわち、
◎顧客拡大に直接関係する部門 →品質方針⇒品質目標
◎顧客拡大に直接関係しない部門 →品質方針→品質目標(直接部門)⇒品質目標
となる。

具体的には、顧客拡大を推進するために生じるインフラの整備、必要要員の確実な採用、新規事業によって考慮すべき法規や必要な届出・環境影響の調査、給与制度・人事制度の改善などが考えられる。

顧客拡大を品質目標のテーマに設定した場合に、いわゆる間接部門のかかわりを明確にして、全社的な取組みと位置づけて管理することも重要な要素である。
(了)

設定した品質目標を達成するためのプロセスをいかに監視・測定していくかがポイントと解説する有賀氏。

■設定した品質目標を達成するためのプロセスをいかに監視・測定していくかがポイントと解説する有賀氏。

<アイソムズ 2006年8月号掲載>

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