特集 続々登場! 地球温暖化防止に挑む、新環境マネジメント規格
“マイナス6%”達成に向けた新たな計画、温室効果ガス削減への長い道のり
編集室
「地球温暖化現象」の始まりは、1700年代中頃といわれている。産業革命以降、石油や石炭などの化石燃料の大量消費によって急速に二酸化炭素濃度が高まったことが原因である。産業革命前と比較し、2000年には二酸化炭素の濃度は、約1.3倍になっているという報告もある。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の2001年の報告によれば、19世紀末以降、地球の平均気温は、0.3~0.6度上昇したという。さらに約100年後の2100年には、現在よりも気温は1.4~5.8℃、海面は9~88cm上昇するといわれる。現時点では、世界全体の温室効果ガスの大気中への排出量は海洋や森林に吸収される量の2倍程度となっており、その結果、大気中の温室効果ガス濃度は上昇の一途をたどっている。温室効果ガス濃度の安定化のためには、排出量が吸収量と同等のレベルになるよう、現在の排出量からの大幅な削減が必要である。本項では温室効果ガス削減への国際的取組みである「気候変動枠組条約」からその長期的・継続的な削減目標となる「京都議定書」の発効、さらに国内の「京都議定書目標達成計画」について概要をまとめた。
気候変動枠組条約の採択
国連の場において初めて地球環境問題について議論されたのは、1972年のストックホルムで開かれた国連人間環境会議にさかのぼる。
これ以降、地球温暖化を中心とする環境問題を分析する枠組みの国際的整備が開始され、その中心となった経済協力開発機構(OECD)が、現在も環境政策の基本原則の一つになっている汚染者負担原則(PPP)を確立している。
1985年には地球温暖化に関する初めての国際会議「気候変動に関する科学的知見整理のための国際会議」がオーストラリア・フィラハで開催され、科学者が集まり科学的知見を整理・評価している。
1988年には「変化する地球大気 国際会議」がトロントで開かれ、大気中の二酸化炭素が環境破壊の原因になる可能性があること、それを1988年比20%削減するべきであると勧告した。同年IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が設立され、気候変動について政府間で検討する場が設置された。
1990年の第2回世界気候会議では国連総会で「気候変動枠組条約」策定が決議され、4回にわたる「気候変動枠組み条約交渉会議」(INC)を開催、その結果、1992年に国連で「気候変動枠組条約」を策定した。
同年ブラジルのリオデジャネイロにおいて開催された「国連環境開発会議」(地球サミット)において、「気候変動枠組条約」を採択、155ヵ国が署名した。この条約は気候系に危険な人為的影響を与えることとならない水準において、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極的な目的としている。具体的には締約国に対して温室効果ガスの排出と吸収の目標の作成、温暖化の国別の計画の策定と実施などが、義務として課されることになった。その中でも先進国といわれる締約国に対しては、2000年までに二酸化炭素とその他の温室効果ガス(メタン、一酸化二窒素、HFC、PFC、SF6)の排出量を1990年レベルにまで戻すことを目標とした。
京都議定書発効へ
「気候変動枠組条約締約」発効後、COP(気候変動枠組条約締結国会議)では2000年以降の長期的・継続的な取組みについての議論が本格化する。その結果、1997年、京都で開催されたCOP3において法的拘束力のある数値目標を定める「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」が採択された。
「京都議定書」は先進国の温室効果ガス排出量について、法的拘束力のある数値目標を各国ごとに設定したもの。概要は以下のとおり。
達成方法:各国の政策に一任
対象ガス:二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、代替フロン等3ガス(HFC、PFC、SF6)
吸収源:森林等の吸収源による二酸化炭素吸収量を算入
基準年:1990年(HFC、PFC、SF6は1995年としてもよい)
目標期間:2008年~2012年の5年間
数値目標:先進国全体で少なくとも5%削減をめざす。
各国の目標:日本:-6%、米国:-7%、EU:-8%など
議定書には、さらに国際的に協調して目標を達成するための仕組み(京都メカニズム)を導入している。具体的な仕組みは以下のとおり。
排出量取引:先進国での排出枠(割当排出量)をやり取り
協同実施:先進国間の共同プロジェクトで生じた削減量を当事国間でやり取り
クリーン開発メカニズム:先進国と途上国の間の共同プロジェクトで生じた削減量を当該先進国が獲得
2001年にはブッシュ政権になった米国が京都議定書から離脱を表明したが、2004年にEUとのWTO加盟交渉の妥結を受けてロシアが京都議定書に批准したことで発効条件を満たし、2005年2月16日に京都議定書は発効された。
日本の「京都議定書目標達成計画」
日本の2004年度における温室効果ガス総排出量は13億5,500万t、1990年比では約+8%であり、2012年までには1990年比で約14%の削減をしなければならない状況である。
日本では2003年3月に策定した「地球温暖化対策推進大綱」に基づき地球温暖化対策を進めてきたが、京都議定書の発効を受けて、2005年4月28日、「京都議定書目標達成計画」を策定した。
この計画では、排出量全体の約90%にあたる二酸化炭素について、2010年度時点の排出を2002年度排出量から約10%近く削減するなど、対象ガスごとの目標が設定されている。
また、従来の部門別目標が改訂され、排出増が大きい部門については、2010年の排出量を部門ごとの基準年比でそれぞれ、民生業務部門15.0%増、民生家庭部門7.0%増(民生部門全体では10.7%増)、運輸部門15.1%増に抑制するとした一方、産業部門で部門ごとの基準年比-8.7%、エネルギー転換部門で同-17.1%とした。
削減のための政策の方向性については、(1)環境と経済の両立、(2)技術革新の促進、(3)国民各層の参加と連携促進、情報共有化、(4)多様な政策手段の活用、(5)評価・見直しプロセス(PDCA)の重視、(6)温暖化対策の国際的連携の確保、の6点が基本となっており、対策の定量的な評価・見直しを行うことにより7%削減約束達成を確実にするとともに、温暖化対策の国際的連携を確保するとしている。
具体的施策への取組み
「京都議定書目標達成計画」策定から1年経ち、計画に基づいた具体的施策が動き出している。
2006年4月1日には、改正された地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)に基づき、温室効果ガスを多量に排出する者(特定排出者)に、自らの温室効果ガスの排出量を算定し国に報告すること、及び報告された情報を国が集計し、公表することを義務づける「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」が施行されている。
さらに、京都メカニズムの活用についても国レベルの動きが本格化している。京都議定書目標達成計画では、国内温室効果ガスの排出削減対策及び国内吸収源対策を基本として、国民各界各層が最大限努力していくこととしているが、それでもなお京都議定書の約束達成目標に不足(基準年総排出量比1.6%)が見込まれる。この不足分については、補足性の原則を踏まえつつ、京都メカニズムの活用により対応することとしている。このため、経済産業省及び環境省は、NEDO技術開発機構に、京都議定書目標達成計画に沿って政府のクレジット(移転が可能な排出割当量や排出削減量の総称)取得を委託することとし、「京都メカニズムクレジット取得事業」を開始、現在クレジット購入契約を締結する事業者を公募している。
<アイソムズ 2006年9月号掲載>

