特集 続々登場! 地球温暖化防止に挑む、新環境マネジメント規格

特集 続々登場! 地球温暖化防止に挑む、新環境マネジメント規格

ようやく船出したTypeⅢ、比較の困難さなど課題は山積、定量的情報の活用に期待

社団法人 産業環境管理協会
環境技術部門 製品環境情報事業センター LCA開発推進室 主査 中庭 知重 氏

「TypeⅢ環境宣言」と題する環境ラベルの規格ISO14025が満を持して7月1日に発行された。この規格はまだ土台ができた段階で課題は多く残るものの、ライフサイクルで見たパフォーマンス負荷の低い製品を選んでもらうため、詳細な比較情報を与えられるよう購買者と利用者を支援するという画期的な内容だ。そこでTC207/SC3の中庭氏に今回の規格発行の経緯、内容、課題などについて聞いた。
(注)文中、ISO14025規格の訳文は仮訳である(JISは2006年度中に発行される予定)。

TypeⅢの数が少なくIS化に時間が


本誌:ISO14021、ISO14024は1999年の発行ですから、ISO14025はずいぶん時間がかかったと感じますが。

中庭:TypeⅠ(ISO14024)の時は、IS化の前にドイツのブルーエンジェル(1978年)や日本のエコマーク(1989年)がすでにあったので規格化作業がスムーズに進みましたが、TypeⅢはまだスウェーデン、韓国、日本が準備段階で、実際に行っているところも少なく、必要性が認められなかったのです。通常、標準化はたくさんのものがあって共通ルールを作らなければいけない時に行われるべきものですから、数の不足が問題でした。しかし、スウェーデンのEPD(Environmental Product Declarations:1998年に実用化されたTypeⅢ環境宣言)やIPPグリーンペーパー(Green Paper on Integrated Product Policy:ECが2001年2月に発行した統合的製品政策に関するグリーンペーパー)といった言葉がポツポツと使われるようになり、デンマーク、ノルウェー、ドイツではプロジェクト単位ながらもTypeⅢが始まり、さらに1998年くらいからVolvo、Ericssonといった大企業がISO14040に沿ったLCA型の宣言を一般向けに出し始めました。そういう時代の変化によって、IS化にゴーサインが出たのです。

本誌:LCA手法を使うので、ISO14040番台と密接な関係ですね。

中庭:ISO14025は原則としてISO14040に基づき、書いていないところは14040に従い、ISO14020と一貫性を保つようになっています(図1)。

さらにISOの中でTC59/SC27のISO/DIS21930(持続可能な建物)という建材のLCAに基づく環境宣言がありますが、これはISO14025に基づいています。ISO14025にセクターの概念はないのですが、セクター規格を作る際には参考にするよう、序文に書かれています。なお、CEN規格でISOをさらに詳細にしたTypeⅢベースの建材の環境ラベルを作ろうとしていますので、ヨーロッパではまず建材の分野からTypeⅢが進んでいきそうです。

本誌:業種によってはラベルがないと市場で相手にされないようですね。

中庭:どこの国にも突出している業種がありますが、それはおそらく市場での競争の影響でしょう。TypeⅠに関してフランスではティッシュペーパーとテキスタイル、日本はTypeⅢに関してコピーやプリンタなどの事務機器やデジカメが多く、反面家電は少ないです。韓国はサムスンとLGくらいですし、一つのPCRに一企業程度しか製品ラベルを作っていません。スウェーデンはEricssonが冷蔵庫の大きいものから小さいものまで1社で作っているだけなので企業間比較ができません。日本は一つの製品群に複数企業が多くの製品を出しているので、計算ルールが正しいか、比較していいかをケーススタディして規格の有効性を試すことができます。

本誌:TypeⅠとの関係は。

中庭:TypeⅠは、例えば「リサイクル率が60%以上」だと定性的にわかります。しかし、それが61か99か、どのくらいエコなのかの程度はわかりません。そこでTypeⅢを使うことで、定量的にわかります。

規格の話とは外れますが、多くの製品にTypeⅠのラベルが貼られて比較できない時は、例えば水消費で比較する、CO2にこだわる、リサイクル率にこだわるなど、自分が一番気になる一側面で比較するためにTypeⅢを使うこともできます。規格には書いてはいませんが、TypeⅢの中でA、B、Cのランキングをすることも可能です。理想はTypeⅢの情報をもとに、ごく優秀製品についてTypeⅠを作ることですが、TypeⅠとの統一は難しいのです。

本誌:監督官庁も違いますね。さて、エコプロダクツが100%になると、エコプロダクツではなくなります。

中庭:そうですね。なおISO14025は、ラベルをつけたからエコプロダクツというわけではありません。悪いパフォーマンスでもいいのです。判断は消費者やユーザーに委ねられます。

本誌:相当自信がないと逆効果ですね。また、メーカーは知識があっても販売店は違いますし、エコプロダクツだからといっても置いてはくれません。

中庭:環境側面だけで買ってとはいえませんし、コストや品質も含めた製品のあらゆる面に関する統括的な評価は個人個人で違うので、規格化はできません。でも、「こう使える」という提案は必要です。

本誌:さて、ISO14025の内容は。

中庭:以下の表のとおりです。

ISO14025(仮訳)


1. Scope(適用範囲)
2. Normative references(引用規格)
3. Terms and definitions(用語及び定義)
4. Objectives(目的)
5. Principles(原則)
6. Program requirements(プログラム要求事項)
7. Declaration requirements(宣言要求事項)
8. Verification(検証)
9. Additional requirements for developing Type III environmental declarations for business to consumer
  communication(消費者コミュニケーションに使うための追加的な要求事項)

本誌:ISO14021(TypeⅡ)、ISO14024(TypeⅠ)の改訂は。

中庭:ISO14024は2004年に再確認し、現在のままもう5年間使うことになりました。ISO14021は昨年の総会で、今回は改訂しないけれども、この5年間に必要があれば改訂するということになっています。

目的は比較情報入手の支援


本誌:ISO14025の目的は。

中庭:LCAに基づく情報と製品の環境側面に関する情報を提供し、製品間の詳細な比較についての情報を与えられるように購買者と利用者を支援し、環境パフォーマンスの改善を奨励し、製品のライフサイクルを通じて同製品の環境側面を評価するための情報を提供することです。

本誌:「TypeⅢはLCAの規格だ」とは言い切れないのですね。

中庭:それは間違いではないですが、「TypeⅢ=LCA+プログラムで決めた項目に沿った追加的環境情報」ですから、LCAだけともいえません。

本誌:「購買者と利用者を支援する」という部分はもめたそうで。

中庭:LCAの情報は数値が出てしまうので、比較可能性の問題が生じます。ここで、「比較できる」とは言い切りませんでした。LCAは不確実性を含みますから、購買者と利用者が納得し、環境負荷のポテンシャルだということを把握した上で比較のお手伝いができるような情報を与えるものなので、assistになったのです。

本誌:新しい考え方はありますか。

中庭:新しい用語として、PCR(Product category rules)、PCR review、Information moduleがあります。Product category rulesは、製品ごとに注目すべき環境側面が違うため一律のルールは作れません。しかしISO14021のように環境側面をリサイクル側面や省資源と横で切るやり方は難しいので、テレビやテーブルという製品カテゴリーごとに行う形になりました。Information moduleはライフサイクル評価のため、様々な情報を集めてつなげていくということです。

この規格には下記九つの原則があります。1、2、3はISO14024と同じで、4、6、8がTypeⅢ特有です。

原則(仮訳)


1. Relationship with ISO14020(ISO14020との関連)
2. Voluntary nature(自発的な自然)
3. Life cycle basis(ライフサイクル基準)
4. Modularity(モジュール方式)
5. Involvement of interested parties(利害関係者の参画)
6. Comparability(比較可能性)
7. Verification(検証)
8. Flexibility(柔軟性)
9. Transparency(透明性)

4.のModularity(モジュール方式)は、製造や組立で使用されるLCAデータをTypeⅢ環境宣言の開発に使用できるということです。

本誌:6.のComparability(比較可能性)は、購買者・ユーザーがライフサイクルを配慮して環境パフォーマンスを比較することでしょうか。

中庭:先ほどの目的ではassistを使いましたが、ここではallowです。Enableほど強い意味ではなく、見る者の自主的な比較を想定しています。そして、この比較で得た情報は、こういう情報を組み合わせています、この情報はちょっと古いですといったTransparency(透明性)も必要になります。

本誌:比較は難しいですね。

中庭:ええ、比較可能性を支援するといいながら、もう一方では厳しい要求事項が相当書き込まれています。

本誌:追加的環境情報の要求事項に「比較主張であってはならない。製品領域において比較可能でなければならない」とあります。

中庭:簡単に比較できると考えられては困るので、TypeⅢでは、ラベルに「この製品はA製品よりも優れています」とか、「環境パフォーマンスが優れています」とは書けないのです。書いてはいけないけれども、並べて比較できる状態にはしなければなりません。現実には、まだ比較できるほどの数はありませんが。

本誌:環境宣言の内容は。

中庭:住所とか商品名、連絡先、写真などの商品についての一般的な内容と、LCAの情報、使用ステージ、エネルギー消費量、CO2排出量などのData from LCA、LCI or info modulesの部分と、LCA以外の製品環境情報からなるAdditional environmental information(追加的環境情報)の3分野から成ります。

追加的環境情報はISO14025に例示はありますが、そこからでも、これ以外でもPCRによって選びます。

本誌:2002年にスタートした国内プログラム、エコリーフへの適用は。

中庭:エコリーフもスウェーデンのEPDプログラム同様、TRに基づいて作りましたから、ほとんどは言葉の違いで、若干の要求事項の追加だけです。若干の微調整は本年度中のJIS化終了後に行います。

調和や比較面で課題が山積


本誌:課題はすでに山積とか。

中庭:今回はあまり重箱の隅をつついたり、すぐに解決できない問題を掘り起こすよりも規格化によるステータス確立が重要だと、5年後を狙ってGEDnetでも話をしています。

例えばプログラムのオペレータに特色があっていいと原則8.でFlexibilityを認め、機関はPCRやプログラムを作って、どこの国でも誰がやってもいいという一方、世界共通のテレビのPCR、パソコンのPCRが理想でharmonizationが望ましいとして、PCRは細かいルールがあります。この点は矛盾を感じます。

本誌:PCRは早いもの勝ちですね。

中庭:そうです。そして、既存のPCRは自主的にチェックするしかありません。そこはリーズナブルな努力で参考にしなくてはならないのです。しかし、そのまま使うことは難しく、日本でデジカメのPCRがすでにありますが、韓国では別に作りました。harmonizationに結びつけるには少し力が弱いです。

本誌:プリンタとするか、カラープリンタ、モノクロプリンタにするか、といったカテゴリー分けは。

中庭:日本は細かいですがスウェーデンでは食器洗い機と洗濯機が同じ(水と洗剤で物を洗う)です。製品カテゴリーの設定が決まらないと、PCRは揃いません。そこで他のコード類でできないかを議論しています。

本誌:LCAの経験が少ない途上国ではプログラム実施が困難では。

中庭:ええ。それで日本、ヨーロッパ、アメリカといった原料を輸入して最終製品を作るところではデータが揃わず完全なLCAができません。 また、輸出すると違う使用ステージ、電力量の原単位や作り方などが違いますから、環境負荷のポテンシャルをどう計算するかも課題です。

本誌:比較主張の面は。

中庭:ISO14021では組織自身の以前の工程・製品、他の組織の工程・製品の四つをあげています。旧機種と比べてパフォーマンスがどのくらい上がったかをアピールすることは、ISO14021のどの比較主張に該当するか厳密な議論はありませんでした。しかし追加的な情報に掲載されている「製品パフォーマンス」は実質、改善度、すなわち比較を想定しているようにも読めます。

本誌:比較が困難な他、プログラム運営者の責任も課題と。

中庭:情報を多く出すので読み手の教育も必要ですし、ここが一番重要な情報だと運営者や企業側が特定できるかは検討されるべきでしょう。しかし、NPOなど第三者機関がエコリーフでランキングをするのが許されるのかは重要です。

本誌:規格開発当初からB to Cで使われるか議論があったとか。

中庭:TypeⅢは耐久消費財などが主な対象で、選択に際して専門知識の必要なB to B で使うものであって、B to CはTypeⅠだろうという意見もありました。実際、TypeⅠのエコラベルでは文房具、ティッシュペーパー、洗剤といった消耗品関係が多いようです。しかし、それは規格で決めることではないので、B to B が中心になるだろうけれども、B to CでのTypeⅢ活用を排除はしませんでした。プリンタは会社で使えばB to Bですが、家で使えばB to Cです。なお9章で、B to Cで使う時はもう少し消費者に優しい説明用のマテリアルをつけなさいといったことが補足してあります。最後に、TypeⅡ、TypeⅠ、TypeⅢのラベル全般を専門的に説明する人を養成するなど、ラベルそのものの認知度を上げるための制度も必要だと考えています。(取材:アイソムズ編集室)

図1 LCAに基づく環境宣言の体系

■図1 LCAに基づく環境宣言の体系

<アイソムズ 2006年9月号掲載>

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