特集 続々登場! 地球温暖化防止に挑む、新環境マネジメント規格
3部構成で排出・削減量の算定・報告・検証まで。
来年2月のISO14065発行でGHG関連規格は完結
編集室
GHG(Green House Gas:温室効果ガス)に関する国際規格ISO14064Part1~3が3月1日に発行された。組織レベル、プロジェクトレベル、妥当性確認・検証という三つのガイドラインからなる総合的な規格であり、日本で苦戦しているCO2排出量6%削減努力の後ろ盾となりそうだ。
GHG問題と排出量取引制度
GHG(温室効果ガス)が地球温暖化など気候の変動に影響を及ぼすことから、1992年地球環境サミットでの国連気候変動枠組条約(UNFCCC:日本を含む188ヵ国が締結)、2005年2月16日発効の京都議定書(日本を含む140ヵ国と欧州共同体が締結)などに基づき、各国ではGHG排出量削減目標を達成するために現在各種の取組みを行っている(先進国全体で5%削減という目標が議定書に明記されている)。
GHGといえば二酸化炭素(以下、CO2)というほど、CO2が大半を占めるが、メタン(CH4)、オゾン層を破壊するフロン類(CFC,HCFC)及びハロン、一酸化二窒素(N2O)、オゾン層を破壊しない代替フロン類など(HFCs:ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン(PFCs)、六フッ化硫黄(SF6))も国連気候変動枠組条約においてGHGとして定義されている。
京都議定書によるGHG排出量削減の仕組み(京都メカニズム)には、次の四つがある。
■京都メカニズム
「排出量取引(ET)」各国が排出量の削減目標を達成するため、先進国間で排出枠を売買。
「クリーン開発メカニズム(CDM)」
先進国と途上国で共同してプロジェクトを実施し、削減量を先進国に移転する。
「共同実施(JI)」
先進国共同で省エネプロジェクトなどを実施し、削減量を取引する。
「吸収源活動」
先進国で植林などの活動により、CO2を吸収する。
ここで中心的な役割を果たすのが第三者による排出量検証を含む排出量取引制度である。
京都議定書により、2010年までに12.5%の削減を図る英国では、2002年4月に世界で初めて市場全体を網羅する温室効果ガスの取引制度である英国排出権取引制度(UKETS:UKEmissionsTradingScheme)を開始した。
欧州では、ドイツの21%削減からポルトガルの27%増加まで削減目標はまちまちであるが、欧州全体として2010年までに8%減の目標を掲げている。EUETS(欧州排出量取引制度)は、EU加盟国内の約12,000施設(Installation)を対象にしたキャップ&トレード型(政府が温室効果ガスの総排出量を定め、それを個々の主体に排出枠として配分し、個々の主体間の排出枠の一部の移転・獲得を認める制度)の排出量取引スキームであり、2005年1月1日にスタートした。2005年~2007年を1期、2008年~2012年を2期とし、第1期ではエネルギー集約産業(電力・熱供給、製油所、鉄・非鉄金属、セメント、ガラス、窯業、パルプ)についてCO2のみを対象とするが、これはEUのCO2総排出量の約50%をカバーする。第1期3年間の排出量上限超過の罰金は、CO2、1t当たり40ユーロである。
2008~2012年の第2期は運輸・航空部門の取り込みを予定し、メタンなど他のGHGも対象となる。排出量上限超過の罰金は100ユーロである。各国は、アローワンス総量などを盛り込んだ国内割当計画(NAP)を欧州委員会に提出し、承認を得る。また、各企業はその目標達成のためにCDM/JIからのクレジットを利用することができる。
日本ではJ-VETS(環境省自主参加型国内排出量取引制度)が2005年にスタートしている。自主的にCO2排出削減目標を設定すると設備補助(1/3)などが受けられる他、第三者機関が検証する仕組みであるが、2005年は34事業者、2006年は61事業者が参加している。
事業者は国内排出量取引制度に参加すると、設備補助などインセンティブが得られる。そして削減するか、排出枠を国内外の市場から購入する(CDM/JIなどのクレジット)。目標以上削減した排出枠は、国内で売却することも可能である。また、事業者はこういった制度に参加することでCSR、環境格付、社会的責任投資などの面で企業イメージをアップさせることができるとともに、将来予想される規制への対策を先取りすることができ、場合によっては新規ビジネスの機会を得ることもできる。
しかし、日本の排出削減は順調とはいえない。2003年のCO2換算の国内排出量は13.58億t、基準年1990年比で+8.3%増(削減目標との差14.3%)であり、2004年のCO2換算の国内排出量も13.55億t、基準年1990年比で+8.0%増(削減目標との差14.0%)となっている。
なお排出量の算定方法としては、環境省の「自主参加型国内排出量取引制度実施ルール」、「事業者からの温室効果ガス排出量算定方法ガイドライン」や経産省・国土省「ロジスティック部門におけるCO2排出量算定方法共同ガイドライン」といった方法がある。また経産省では、中小企業向けに「PRTR排出量等算出マニュアル第3版」を2006年1月に示している。
規格の目的とISO14000s
3月に発行されたISO14064は、2002年末からTC207/WG5(気候変動作業部会)で規格化の作業が開始された。この作業には延べ45ヵ国175人が参加しているが、2006年2月のFDIS投票は53対0の絶対多数で可決された。規格の目的は、以下のとおりである。
■ISO14064の目的
・柔軟で政府間に中立なGHG制度のツールを開発する・ベストプラクティスを奨励、調和させる
・GHG宣言の環境規範を支援する
・組織のGHG債務、資産、リスク認識、管理を容易にする
・GHGのプログラムと市場発展を支援する
さて、ISO14001の認証取得企業はすでに世界で11万件(日本2万件)にものぼる。ISO14001を中心とした環境関連の規格をISO14000ファミリーなどと呼ぶが、そのうち14000シリーズのものは表1のとおりである(環境関連の規格としては、ISO14000シリーズ以外にも監査の指針:ISO19011や製品規格の環境側面を導入するための指針:ISOGuide64などがある)。
GHG関連の規格としてはISO14065(GHG有効性審査・検証機関に対する要求事項)が現在議論されており、2007年3月に発行される予定となっている(ISO14065については後述)。
第1部は組織レベルでのGHG排出量・吸収量の算定・報告に関するガイダンス
ISO14064の第1部は「組織レベルでのGHG排出量・吸収量の算定・報告に関するガイダンス」であり、大まかにいうと企業などの組織がGHG排出量・吸収量を算定及び報告するためのガイダンス規格である。
ここには事業者が排出量・吸収量の算定・報告をするための仕様と指針が示されている。
したがって、この規格はユーザーと利害関係者に明確で一貫性のある標準のGHG報告様式を提供する他、組織のGHG管理戦略の確立に役立ち、目標や到達点を設定するなどにより事業者のGHG排出削減や進捗の追跡を容易にする。
第1部の構成は次のとおりである。
■第部の構成
1 適用範囲2 用語定義
3 方針
4 GHGインベントリー(発生・吸収に関する目録)の設計と構築
4.1 組織境界
4.2 活動境界
4.3 GHG排出・除去量の算定
5 GHGインベントリーの要素(盛り込むべき内容)
5.1 GHG排出・除去
5.2 排出量削減または除去量拡大のための組織の活動
5.3 基準年GHGインベントリー
6 GHGインベントリーの品質管理
6.1 GHG情報の管理とモニタリング
6.2 文書の保管と記録の維持
7 GHGの報告
7.1 GHG報告の計画
7.2 GHG報告の構成
7.3 GHG報告の様式
7.4 GHG報告の周知
8 検証手続きに関する組織の役割
第2部はプロジェクトレベルでのGHG排出削減量・吸収増加量の算定・モニタリング・報告に関するガイダンス
ISO14064の第2部は「プロジェクトレベルでのGHG排出削減量・吸収増加量の算定・モニタリング・報告に関するガイダンス」であり、プロジェクト単位での排出削減量・吸収増加量の算定、モニタリング、報告するためのガイダンス規格である。また、この規格は京都議定書、EUETSなどのCDM/JIプロジェクト、カナダ相殺制度などのGHGプロジェクトにおいてプロジェクト実施者がGHGプロジェクト算定、モニタリング、報告を計画、実施することを考慮している。
プロジェクト実施者は、以下のような関係を考慮しなければならないとされている。
■プロジェクト実施者の考慮すべき点
・よき慣習のガイダンス(判断基準、方法論、ツールなど)・関連規格(判断基準、規則、方法論、装置など)
・適用可能なGHGプログラム(追加的要求事項、判断基準、規則・政策など)
・利害関係者とのコンサルテーション(コミュニケーションなど)
・関連法制度(法的要求事項など)
第3部はGHG排出量・削減量等の主張に対する有効性審査・検証に関するガイダンス
ISO14064の第3部は「GHG排出量・削減量等の主張に対する有効性審査・検証に関するガイダンス」であり、有効性審査と検証のための仕様と指針が示されている。
この規格の役割はGHGの有効性審査・検証に最良な慣習を確立することであり、第一者、第二者、第三者による監査・検証に用いることができるが、組織やプロジェクトなどでの活用に柔軟に対応できる。また、第1部、第2部などのGHG算定基準に適合し、異なるGHGルールに適用可能な中立的な内容となっている。すなわち、事業者が順守すべきGHG排出量算定のルール・モニタリングの検証についてはUKETS、EUETS、J-VETSに対応している。
削減対象事業設計の妥当性評価や削減対象事業の検証については、CDM/JIに対応している。
■第3部の構成
1 適用範囲2 用語定義
3 有効性審査・検証の原則
4 有効性審査・検証の要求事項
4.1 全般
4.2 有効性審査または検証実施者の力量
4.3 有効性審査、検証の目的、範囲、判断基準及び保証のレベル
4.4 有効性審査、検証の進め方
4.5 GHG情報システムと情報管理システムの審査
4.6 GHGデータ及び情報の審査
4.7 有効性審査、検証基準への適合審査
4.8 GHG宣言の評価
4.9 有効性審査及び検証ステートメント
4.10 有効性審査、検証記録
今後の活用と法整備など
まずISO14064のJIS化は、2006年8月に作業が開始され、2007年に発行される予定である。
京都議定書による6%削減を達成するための法改正や消費者・投資家の関心の高まりで、CSRの観点からもGHGは無視できない。ISO14064は今後幅広く使われていきそうだ。
■ISO14064の利用
第1部 自主参加制度で利用第2部 自主参加制度、CDM/JIプロジェクト参加者(枠組で管理すれば)が利用
第3部 EUETS、CDM/JI、その他自主参加制度で利用
さて、最近のGHG関連法規では、まず2006年4月の改正地球温暖化対策推進法で3,000tCO2以上の温室効果ガスの排出量算定・報告・公表制度ができた(虚偽の報告には行政罰の過料20万円が課される)。
同じく2006年4月の改正省エネ法では、熱と電気を合算した指定工場の枠が広がり、また一定規模以上の貨物・旅客輸送事業者(トラック200台、鉄道300両)、荷主(年3,000万tkm)、住宅・建築物の対象拡大(延べ床2,000m2)もなされ、登録調査機関の確認調査制度や物流のグリーン化(支援措置)も実施されている。
2006年7月21日にスタートした京都メカニズムクレジット買取制度 は、政府予算122億円(2006年はそのうち54億円)を使って1.6%(5年で1億CO2t)を政府が買い取る(具体的にはNEDO:新エネルギー・産業技術総合開発機構が自らプロジェクト参加者となり、他のプロジェクト参加者などとクレジット購入契約を締結し、クレジット発行者からクレジットを直接取得する「直接取得型」と、クレジットをすでに取得または今後取得する見込みのある事業者との間で転売によるクレジット購入契約を締結する「間接取得型」がある)。また、CDM/JIプロジェクトからのクレジット移転、グリーン投資スキーム(GIS)、国際排出量取引市場などからの調達を行う。
なお、2005年10月に環境省が案を示した環境税は、家庭、オフィス、事業活動、電気事業者の化石燃料に対し、税率2400円/炭素tを課すもの(一定の削減努力をした大口排出者は1/2軽減)であった。
このほか、2005年に開始された経済産業省の中小企業CO2認証・補助事業には42事業が参加し、1/2の設備補助、第三者認証が行われた。
ISO14065
GHGの有効性審査及び検証を実施する機関に対する要求事項を規定したISO14065(GHG有効性審査・検証機関に対する要求事項)は、2004年末からTC207/WG6で議論され、30カ国75人が参加している。2006年1~6月にDISとなり、2007年3月に発行される見通しである。
ISO14064とISO14065は図1のような関係になっている。
■ISO14065の概要
・原則公平性、責任、機密の保持、力量、開放性、苦情への対応
・一般要求事項
法的及び契約事項、統率と経営層のコミットメント、公平性の確保、賠償責任と財務能力
・力量
経営層と要員、有効性審査及び検証チーム(リーダー含む)、契約要員の活用、アウトソーシング
・有効性審査及び検証プロセス
ISO14063-3基準の参照、追加的要求事項
・その他の要求事項
異議申し立てと苦情、マネジメントシステム
■表1 ISO14000シリーズの規格
■図1 ISO14064とISO14065の関係
<アイソムズ 2006年9月号掲載>

