特集 ISOコンサルタント・ガイド2006
5SやVM、提案制度がベースのISO知識や情報を共有することで意識向上
東京ホールセール株式会社 代表取締役社長 伊澤 今朝美 氏
東京ホールセール株式会社 専務取締役 武井 秀夫 氏
東京ホールセール株式会社 常務取締役 山本 明次 氏
東京ホールセール株式会社 総務部次長 金丸 茂夫 氏
工場、管理、営業3部門の他、グループ一丸となってISO9001、そしてISO14001の認証を取得した特殊品クリーニングの雄・東京ホールセールの経営陣を府中に訪ね、システム構築の実態とコンサルタントとのかかわりなどについて聞いた。
設計開発を含めた9001を取得
本誌:まず、貴社の業務を簡単にご説明ください。
伊澤:当社は1955年に誕生し、翌年ドライクリーニング工場を落成して操業を開始しました。当社はホールセールという社名のとおり、町のクリーニング屋さんから洗濯物を預かり、クリーニングしてプレスをしないで返す、いわゆる下請分業の形でスタートしました。当時はこういう会社が東京だけでも50~60社はあったのですが、欧米からコンパクトなドライ洗浄機が入ってきて、クリーニング屋さんが自前で設備を持つようになったため、1963年をピークに仕事が減少するようになりました。
そのような中で、クリーニング屋さんと競争する形で消費者と直接取引を始める会社も多かったのですが、私どもはあくまでもホールセールにこだわり、その代わりにサービス品目をじゅうたん、皮革、和服、毛皮といった特殊品、難しいものへと移行し、今日に至っています。
本誌:貴社で扱う特殊品はじゅうたん、カーテン、ソファーにバッグと多岐にわたるので、特性に応じた技術やスキルが必要では。
伊澤:ええ。KB値という溶解力を示す値がありますが、和服にKB値の強いものを使うと、接着剤がはがれて模様まで取れてしまいます。
本誌:今は水や石油洗いが大半だと。
伊澤:ドライクリーニング用洗剤は石油系や塩素系が主流ですが、最近は環境負荷低減の観点から水系のクリーニングも盛んに行われています。毛皮類などはトウモロコシの芯やクルミ、アンズの殻を粉にしたもので洗うパウダークリーニングも行います。
本誌:ISO9001導入のきっかけは。
伊澤:先代社長の土田会長がロータリークラブの活動や、毎年行われるクリーニング業界の国際会議などを通じ、世界基準の規格があるのだから取り入れよう、と決断をしたのです。
武井:私どもの仕事は、当社が原材料から何かを製造するのではなく、全部お客様のものをお預かりするわけですから、80点でいいというわけにはいきません。目標は常に100点です。そう考えた時に、国際的な規格であるISO9001を取得することはお客様に安心感を与えることができますし、競争上も有利です。
本誌:当時は今と規格の構成が異なり、設計管理を除く「製造から据付けまで」19項目の要求事項から成るISO9002や監視・測定のみのISO9003もありました。あえてISO9001を取得した理由は。
伊澤:同業では入出荷にポイントを置いてISO9002を取得するところもあり、クリーニング業に設計開発があるのかという議論もありましたが、当社では新サービス開発や技術開発を行っているので、ISO9001で行こうということになりました。例えば、今までクリーニングの対象として考えられていなかった、私たちが日常もっとも過酷に使っている革靴を水洗いできないか、放っておけばカビが生えてしまいますから、それをどうするか、そういうことが設計開発ではないかと考えました。それが、今では1日200足の受注につながっています。
実際に業務でやっていることを
本誌:コンサルタントの選択は。
伊澤:先代社長が業界のお付き合いの関係で社会経済生産性本部(当時)の吉田先生(現シスウエイ)を知り、お願いすることにしました。
本誌:まず何をしましたか。
伊澤:まず推進委員会を設置しました。私が管理責任者、金丸が事務局です。そして毎月やってこられてアドバイスを受け、その間、私どもは宿題をするなどしました。ISOについて一から教えていただいたのです。
本誌:難しかったところは。
伊澤:要求事項の解釈ですね。吉田先生からは、規格に上乗せするのではなく、実際に業務でやっていることを文書化しなさいといわれました。当時の落合総務部長を中心にマニュアルは章ごとに担当者を決め、分担して作ったのですが大変でした。
武井:当社ではISO9001を当社単体ではなく、グループ全体で取得しました。珍しい例だとは思いますが、じつは業務の内容が違うのです。例えば甲信東京ホールセールや東海東京ホールセールは、主力がじゅうたんとふとんです。一方、皮や毛皮は本社です。湘南東京ホールセールは1995年に平塚工場を分社化したものですが、ここはYシャツ中心です。
金丸:異なる業務を行いながらも、「どこを切っても金太郎飴」になるようにと進めていったのです。
本誌:山梨や愛知からも毎月推進委員メンバーが出て来てコンサルタントの支援を受け、ともに構築していったのですね。
武井:そうですね。社内でお互いの業務を知り合う、知識や情報を共有するということはもちろんですが、交流という面も大きかったです。それまでは、幹部でありながら名古屋は見たことがない、という人もいました。今でも、内部監査の時には山梨や愛知から人が来ています。
本誌:内部監査を行うことで、被監査側を第三者の目でチェックできますし、監査側も勉強になりますね。
武井:内部監査を行うことで文書能力も格段に向上しました。現場の人はなかなか書類を書く機会がありませんから、ここはISO導入の隠れたメリットの一つでしょう。
本誌:貴社社員はもちろん、コンサルタントも勉強になったようですね。
金丸:よく理解されていましたね、大変な努力をされたと思います。
武井:審査員もクリーニングに関してよく勉強していました。また、グループ一括認証ということで審査しがいがある、ともいわれました。そこで私たちも、それ以上にやらなければだめだなと痛感しました。
本誌:ISO導入時は深夜・休日労働など大変だったのでは。
金丸:土曜日にコンサルタントに依頼して集合教育や内部監査員教育、グループ全体のマネジメントレビューを行いました。対象は幹部ですから時間外・休日は関係ないですが、一般社員にはなるべく時間内で済むようにしました。じつはクリーニング業界では毛皮が3~6月、皮が4~7月、和服が10~1月という繁忙期がありますので、それ以外の時期に研修を行うなど工夫しています。
武井:もっともグループ会社の方は、20時まで通常業務で、その後に23時、0時まで勉強していたようです。推進委員がわかっていなければ下の人に徹底することはできませんから、幹部の方は職責に応分の苦労をしたのではないかと思います。
本誌:内部監査員の育成は。
金丸:シスウエイの養成講座受講で社内資格を付与しています。役職者を対象に、集合研修で2日間みっちりやります。班長、係長、課長、次長、部長という職階がありますが、品質は班長以上、環境は課長以上が資格取得しています。品質の内部監査員は60~70名になります。
本誌:漠然とした文書ではなく、お客様対応のマニュアルや、製造のポイントとなる生産の現場で本当に使うものを作られているそうでうね。
金丸:吉田先生の指導で、いわゆる作業マニュアルに近い、使えるものになりました。現在15版ですが、審査が始まる前にもう4~5版でした。そしてISO取得後も、完全に回るようになるまで内容の推敲を重ねました。ちょっと分厚いのですが、最初はもっと厚かったです。
本誌:完全に回るまでの期間は。
伊澤:2年はかかったと思います。
本誌:マニュアルができると達成感があるので満足してしまいがちですが、業務との一致ということでは、版を重ねているのが正しい姿ですね。
武井:ええ。マニュアル完成後も常に見直し、勉強会も行ってきました。
山本:内部監査を受け、マネジメントレビューもありますから、いったんやり出したらやらざるを得ません。いい意味で強制されています。
伊澤:とにかくやさしくわかりやすいものをということで、事務局の方で音頭をとっていきました。また、現在は皮革だけで年間50万点の受注がありますが、ピーク時の平成4~5年は100万点でしたから半減しています。このように流行り廃りはありますし、そうなれば企業ですから合理化しなくてはいけないこともあり、作業手順も変わりますからマニュアルのメンテナンスが必要になるのは当然です。
5SやVM、提案がISOに活きた
本誌:コンサルタントの支援を受けてISOを導入した一番の効果は、風通しがよくなり、グループ一丸となって改善をしていくインフラができたということでしょうか。
伊澤:そうですね。また、当社は5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を経営のベースに置いていたため、ISOのマネジメントシステムを導入しやすい環境だったかもしれません。
本誌:といいますと。
伊澤:5S運動は、習慣化しないと定着しません。クリーニングは、最近はファッション性を損なわない仕上げなどもありますが、ベースは汚れをとってきれいにすることが使命です。しかし、職場が汚れていたらそんな気持ちは生まれません。ルールを決めて、ルールを正しく守り運用していくことは、マネジメントシステムに通じるものです。
金丸:当社ではRC(レインボー・サークル)活動という、自主的なサークルが職場の管理・改善を継続的に行うために知恵を出し合う活動があります。そこには今話した5S委員会のほか、提案委員会、VM(Visual Motivation)委員会があります。VMは職場の不備や改善すべき点を写真に撮り指摘し、提案の方で改善意見を出していただいています。これはISOでいうPDCAによる改善の考え方と同じです。
本誌:サービス業ということでは顧客満足が重要かと思います。
武井:不適合品、再加工品というチェックを行うことで工場の中でのチェック意識を高めています。
伊澤:最終検査は有資格者が出荷していい・悪いの判断をしています。しかし、クリーニング業界はクレーム産業といわれるほど、クレームが多いのです。当社では6,000店の得意先がありますが、ここまでやってもだめか、という思いはあります。しかし、発生しても再発生しないようにするよう努力していますし、少しでも減らすように意識を高めているつもりです。
武井:また、内部監査で前回の不適合は事務局に出して指摘事項に入れる仕組みができていますから、改善されていきます。今では内部監査の計画書も自主的に作らせています。
伊澤:審査機関からは、出荷する際に「合格」と表示してはどうかといわれています。しかし、判断し、評価するのはお客様ですから、今のところ合格という表示はしていません。
武井:なお、ISOの信頼度は抜群です。ISOを取得したということで取引先や官公庁から高い評価を得たこともありますし、クレームの際も、避けられないミスだったのかと納得されることもあります。口だけでなく文書で対応し、記録が残っていることが大事と役所でもいわれます。
本誌:さて、2004年にシスウエイのコンサルティングを受けて取得したISO14001は、2000年のISO9001取得の時点から取得することを決めていたのでしょうか。
伊澤:ええ。先代社長からは早くするようにいわれていました。ですが、まずはISO9001の方が安定してからということで、取得できたのは4年後になりました。
山本:ISO9001と比べればはるかに簡単で、環境問題ですから理解を得やすかったです。もっとも、測定するところや法規制についての突っ込んだ勉強というところは新しいものでしたのでコンサルタントの指導で勉強しました。
武井:私どもで扱う特別産業廃棄物は大変厳しい規制を受けています。特に神奈川県は厳しいので、合同庁舎や市役所にも通っていました。ですから、ISO14001を取得することも高く評価していただきました。平塚市は2000年、神奈川県も2003年にISO14001を取得しています。
山本:日本全体でCO2排出量を減らそうということですから、当社も減らさなくてはなりません。しかし、仕事が増えれば環境負荷も増えてしまいますから、難しいところです。
本誌:事務局は共通ですから、今後は統合していくのでしょうか。
金丸:2冊のマニュアルは統合が必要です。また、内部監査は現在も午前が品質、午後が環境という具合に同日で行っていますが、環境の方は監査員が課長以上のため、これを班長以上まで拡げ、共通化しやすくしようと考えています。
山本:品質は毎日のやり取りですが、環境は緊急事態がないため、マンネリになりがちです。そこで、各子会社も含め、維持継続決起大会を行うなどして意識を高めています。
本誌:貴社は労働安全や障害者雇用、労働保険などで表彰を受けておられ、労働安全衛生マネジメントシステムも導入しやすいかと思いますが、コンサルティング会社とはこれからも長いお付き合いになるのでしょうか。
金丸:そうですね。個人的には労働安全衛生マネジメントを次に導入して統合したいと考えていますが、現在も「シスウエイクラブ」に入って最新情報をいただいたり、内部監査員研修で便宜を図っていただくなどして、いい関係を築いていると思います。
本誌:本日はご多忙の中、貴重なお話を有難うございました。 (取材:アイソムズ編集室)
■左から環境管理責任者の山本常務、品質管理責任者の武井専務、初代ISO管理責任者を努めた伊澤社長(当時専務取締役)、ISO事務局長の金丸次長。
<アイソムズ 2006年10月号掲載>

