審査登録機関TOPインタビュー(番外編) ―ISO審査の現状・未来を探る―

審査登録機関TOPインタビュー(番外編) ―ISO審査の現状・未来を探る―

第三者適合性評価制度に求められている原点に返る!
制度をよくするためコンサルティングと審査の峻別に新見解


財団法人 日本適合性認定協会 専務理事 井須 雄一郎 氏


現状分析と改善点


本誌:第三者適合性評価制度の現状についてご意見をお聞かせください。

井須:日本におけるこの制度は、認定機関である(財)日本適合性認定協会(以下、JAB)の設立が1993年11月で、いくつかの審査登録機関はその1~2年前からすでに海外の認定機関から認定を受けて審査登録活動を開始していますから、約15年の歴史があります。

その間、ISO9001にかかわるQMSとその後に発行されたISO14001にかかわるEMSを中心に拡大し、現在QMSが約53,000件、EMSが約22,000件(数字はいずれもJAB発表の登録組織)になっています。

しかし、最近特にQMSに顕著ですが、累計登録件数の伸び悩みが起こっており、その意味では一つの曲がり角にきています。

もう一つは、登録されている企業の不祥事などが起こり、この制度に対する信頼性の問題が社会、国民、行政サイドなどから問われていることです。導入から約15年経過し、制度自体はある程度確立した状態ですが、制度自体の有効性など、その中身の問題を再度原点に返って見直す時期にきているのではないでしょうか。

本誌:見直すポイントはどこになるでしょうか。

井須:やはり第三者適合性評価制度のお客様、メリットを享受される方は誰なのかという点につきます。JABが直接認定審査をするのは審査登録機関ですが、その審査登録機関は組織を審査し登録しています。その組織の活動によってできる製品、サービスの提供先は国民社会という図式が成り立ちます。したがって、第三者適合性評価制度の本当の意味のお客様は、社会や国民であるということを今一度再確認し、そこから信頼性をもらえるような制度にしていく必要があります。

この部分が忘れられ、組織のためのよい審査、安易な審査など表面上は喜ばれるような審査が一部でも行われるようになると、蟻の一穴からのたとえではありませんが、制度自体の信頼性欠如というイメージに直接つながってしまいます。したがって国民のために第三者の立場で審査していることを再認識することが大切です。

社会的不祥事への対応

本誌:社会的不祥事についてのご意見をお聞かせください。

井須:最近の不祥事問題については、組織が構築したマネジメントシステムが法令順守を確実に実行できるものになっているか、審査登録機関が審査することが重要です。ISOの規格には法令順守がきちんと要求されていますから、視点をどこに置いて審査するかという基本に立ち返るべきです。また、この制度自体が任意分野であり、強制分野とは違うことを認識する必要があります。現実に不祥事が起きたということは、企業のシステムに問題があったわけですが、任意分野では強制分野とは違った観点からのアプローチができるはずですし、同じでは意味がないと思っています。

では何ができるかになりますが、任意分野ではその原因がマネジメントシステム上のどの部分に問題があったのかを掴んでもらい、PDCAを回して改善してもらう方法を取っています。システムを一番よくわかっている組織自身がこのような改善を実施し、審査登録機関がこれを第三者の目で評価することによって、本質的な改善が実現すれば、この制度自体が生きて使われたことになり、結果として登録を取得してよかったということにつながります。この制度を生かすも形だけのものにするのも、組織と審査登録機関の信頼関係にかかっているといえます。

ただ、問題があることも承知しています。強制分野は法律に基づく強制力があり、同一問題に対する監査は、任意分野より優先されますから、任意分野は手ぬるい、遅いというような批判があります。しかし、これはある意味ではやむを得ないと思っています。

ただし、遅くなった、何もしない、では仕事を放棄するようなものですから、必ず企業に問い合わせをした上で、必要であれば臨時サーベイランスなどを行い、マネジメントシステム上の不備があれば改善を行ってもらうよう審査登録機関にお願いしています。この結果によっては、一時停止や取消しなどの処置も必要と考えます。JABは苦情申立ての一環としてこれらの状況把握とフォローを行っています。審査登録機関の団体であるJACBがそのようなルールを議論して、アプローチの仕方を発表されたことは(アイソムズ・10月号掲載)一つの大きな進歩だと思っています。

制度の民間移行に必要な事柄

本誌:強制分野、任意分野の話がでましたが、行政改革、規制緩和の面からは任意分野を増加させていく必要があると考えますが。

井須:わかりやすい事例として、試験所認定、製品認証制度を例にとりますと、従来これらは国が法令で技術基準などで守るべきことを規定し、その実施確認を国自らまたは国が指定/登録した機関が行っていました。それが、WTO・TBT協定によって国際整合化が図られ、徐々に民間に開放されつつあります。しかし、指定・登録・認定行為はまだ国または独立行政法人が実施しており、任意分野には開放されない分野が大半です。欧米先進国では、この分野での任意分野活用が進んでいます。マネジメントシステム審査登録制度は、当初から任意分野のみでスタートしたことと、制度として大きく成長し、成果を上げてきたこともあって、最近では強制分野の一部で活用されています。

本誌:活用を進めるには何が必要になりますか。

井須:強制分野での任意分野の制度活用が進まないのはおかしいといっても物事が先に進みません。使ってもらうためには、まず使う側に安心感、信頼感が醸成されなければなりません。つまり行政改革や規制緩和による小さな政府の実現への大きな潮流の中でも、制度を渡す相手に対する信頼感がないと、実現が難しいと考えます。何か問題が発生した時の責任はどこにあるのか、何でも最後は政府に責任を追及する国民の意識改革から変える必要があります。

そういう点から、われわれはこの制度を理解してもらうためいろいろやってきたつもりですが、さらなる努力をしていくことが必要です。この制度に関係されている皆様に、ここまで拡大してきたこの制度は、任意分野とはいえ、社会的責任があるということを強く認識していただきたいと思います。そして、問題が発生しても自律的に改善していくことが重要です。そういう努力が実り、信頼されて初めて新たなことが動き出すと思っています。

組織を審査する力量の重要性

本誌:第三者適合性評価制度の果たす役割は先にいわれたことになるでしょうか。

井須:JABは認定機関ですので、認定審査を通じてこのような考え方を理解していただきたいと思います。特に審査登録機関は第三者適合性評価制度の要ですから、最近は組織を審査する力量、つまりコンピテンスについて力点を置いています。国際規格も変わってきていますし、やはりこの制度がきちんと維持されるには審査をする力量、これは審査員だけではなく機関の事務局の力量も含め、少なくとも認定している審査登録機関に対してはこの点が大事であることを話させていただいています。審査そのものの質が社会的責任をともないますから、しっかりした審査が行われる必要があります。

コンサルと審査の峻別への新見解

本誌:その意義を周知するための話をするということですね。

井須:これが一番難しいのです(笑)。JABは、従来からコンサルティングと審査の峻別について力点を置いて厳しく指導してきましたが、最近の認定審査の中から、審査側と被審査側とのコミュニケーションがもっと図られてもよいのではないかと感じています。もちろん基本となるポリシーは変えませんし、ある一線を超えないことを踏まえた上でのことです。従来の考え方から踏み込んだ形になるかもしれませんが、今後浸透させていきたいと思っています。

背景には、指摘した内容がきちんと相手に理解されず、指摘事項に対する是正処置にいたずらに時間がかかっているケースがありました。思い込みやすれ違いの解消は、コンサルティングではなくコミュニケーションだと考えています。

認定審査を前提とした話をしましたが、審査登録機関と組織の間でも同じことがいえますから、その点についてもコミュニケーションが大事だと思っています。

本誌:非常に重要なことを話されていますが。

井須:記事になるとどうなのかという危惧はありますが(笑)、言い方を変えると、最近審査登録機関で自機関の審査方法の特徴をいろいろなフレーズを使ってアピールしていますが、適合性審査ですから規格の要求事項に基づいた指摘をしているはずです。この指摘が経営者の琴線に触れるようなものであれば、この制度の有効活用につながるのではないかと思います。指摘の本質をコミュニケーションによって組織に充分理解してもらうことが大切で、それはコンサルティング行為ではないという見解です。何が不足しているか、どうすればこれを解決できるかは当然ダメですが。

一方で踏み込んではいけない一線を意識しながら、指摘事項を理解してもらう説明ならよいということですが、その目的はあくまでもこの第三者適合性評価制度をよりよいものにしていくためです。

一つのマネジメントシステムへ

本誌:現行制度に対するご意見をお聞かせください。

井須:この制度が健全な形で広まり、強制分野でも広く使っていただきたいと思います。世界から日本の強制分野でどれだけこの制度が使われているか見られていますが、残念ながら活用が遅れています。

前述したように、この制度を使ってもらうための努力が必要ですが、それには制度の信頼性を高めることに尽きます。不祥事などを起こさないようマネジメントシステムを構築し、不幸にして起きた場合もアクションを取って問題点を改善していくことです。

本誌:他にもありますか。

井須:マネジメントシステムを上手に使って欲しいという点です。グローバルの時代、国際整合化などの話をしましたが、企業によっては国内指向のビジネスしかやっていないので相互承認は関係ない、ISOはいらないという考え方も一方であるのも事実です。

しかし、最初は輸出のために取得していたQMSが、現在では5~6人規模の企業まで取得する時代になっています。ここまで広がってきたのは、やはりわざわざお金を払ってISO9001の審査を受け、登録を取得することに何らかの意義が存在するからだと思います。

確かに取得したのにあまり効果がないと止めるところもありますが、大変残念なことで、もう少しうまく活用できないのかと思っています。

もう一つは、組織のマネジメントシステムは一つであることを認識して欲しい点です。組織は昨日今日生まれたものではないはずで、それぞれの歴史の中で継続してきた仕組みがあります。そこを切り離してQMS用の仕組みを新たに作って審査を受けるのではなく、従来の仕組みに足りない部分があれば追加して審査を受けることがポイントです。

そうしないと、社長の目標とISOの目標が違ったり、簡単に達成できるような目標を設定して審査を受けることになり、余計な仕事をしていることになります。マネジメントシステムは一つですから、普段着のマネジメントシステムを運営すればいいのです。このようにすれば必ずよいサイクルが回りだすに違いないと思っています。

最近はISO/IEC27001、ISO22000など新たな規格が次々に出ていますが、これも新たな切り口が増えたということですから、従来の仕組みに足りない部分があれば追加すればいいわけで、それぞれの規格に対して別の仕組みを作っていくのは現実的ではないと思います。

また、審査のやり方も複数のマネジメントシステムを個別にやるのではなく、複合審査、統合審査などを通じて1回で見てもらうことも可能になってきます。審査工数の関係で期間は多少長くなるかもしれませんが、コスト、効率の点では有効な手段ですから、これもこの制度を活用するよい方法だと思います。

本誌:コミュニケーションの話を含め、第三者適合性評価制度に対するご意見をありがとうございます。
(取材:アイソムズ編集室)

財団法人 日本適合性認定協会(JAB)概要
・住所 東京都品川区東五反田1-22-1 五反田ANビル3F
・設立 1993年11月
・法人名称の変遷 1993年11月 財団法人 日本品質システム審査登録認定協会 1996年6月 現在の名称に変更
・適合性評価認定事業分野 マネジメントシステム審査登録機関(ISO9001、ISO 14001、ISO/IEC27001他)試験所 臨床検査室 要員認証機関 製品認証機関 検査機関 MRA法に基づく指定調査事業(国の代行業務)

財団法人 日本適合性認定協会 専務理事 井須 雄一郎 氏

■財団法人 日本適合性認定協会 専務理事 井須 雄一郎 氏

■表1 JAB適合組織件数(2006年9月末、JAB調べ。認定外機関含む)

■表1 JAB適合組織件数(2006年9月末、JAB調べ。認定外機関含む)

■表2 品質・環境認証推移(JABアンケート集計より)

■表2 品質・環境認証推移(JABアンケート集計より)

<アイソムズ 2006年12月号掲載>

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